ウォルフのツル
Petraeovitex wolfei
去年あたりかな。シンガポール植物園のバンドスタンドからプラントハウスと呼ばれる古い植物園のたたづまいを残しているエリアに下りる階段にアーチがついて、見慣れない植物が絡ませられました。
どんなんだろうと思っていたら、最近になってだいぶ茂ってきて、いい感じのお花を咲かせましたよ。
写真があまりよくないのでイメージが伝わらないかもしれませんが、熱帯のキングサリって感じ。
イングリッシュガーデンのキングサリにあこがれる人は多いと思うけど、これはキングサリに勝るとも劣らぬ優美さを持っている植物とTOMは断言します。
藤のように天井全体に垂れる感じではまだありませんが、1本1本が長くて、優雅な感じが本当にキレイ。
もしこのブログを日本の熱帯植物園の人が見る機会があれば、この植物の導入をオススメしまーーす!来園者がきっと「わぁーっ」て言うと思います。
上の写真で見える、ぶら下がっている花序を撮ったものです。黄色の花のように見えますが、じつはこれは花の苞(ほう)。包の中にクリームホワイトの本当の花が咲きます。
黄色の苞はいつまでも色が変わらず、虫を誘います。花は…というとあんまりたくさん見つかりません。黄色の量に対して、よーく探さないと見つからないくらい。うっかりすると、黄色の苞の方を花と勘違いしてしまいそうです。
シンガポール植物園には最近に再導入された植物なのだそうです。前に導入されて記録に残っているのは1956年とのことですから、50年も前の話。ちゃんと記録が残っているところがスゴイ。
50年前に導入したのは植物園のアシスタントキュレーターのJ.W.Ewart氏。彼は、1939年にEric.D.B.Wolfe(マラヤ連邦のメディカルサービスの副長官)からこの植物を手に入れました。この植物の名前にもなっている人物です。ウォルフズバインは最初マレー半島のケダ州とトレンガヌ州で発見されました(1938年)。
E.D.B.Wolfeはアマチュアのプラントハンターでもありました。1903年生まれで医学を学び、オランダ東洋航路の船医を経た後に、マレーにやってきて、ここで結婚、家を建てました。植物になみなみならない興味があった彼は、今回紹介したウォルフズバインやバウヒニアなどの希少な植物の標本を標本室に進呈したそうです。ランは特に彼を魅了しましたが、残念ながら、彼が初めて紹介した様々なランたちは、今では生き残っていません。(ガーデンワイズの記事を超要約)プラントハンターは名前も知られていない人たちがたくさんいたという話は読んだことがありますが、こんな人もいたんですねー。
話を元に戻して…。
最近になって植物園に戻ってきたウォルフズバインは、2002年にタイの民間のコレクターから購入したものなのだそうで、どうりで…今まで全然目にしたことがなかったわけです。
花序が出てきている所かな。これも黄色です。 下の写真が本当のお花です。
クマツヅラ科 Verbenaceae (キク亜綱 シソ目)
原産地:マレー半島
Common name: Wolfe's Vine. ウォルフズバイン
資料:「Gardenwise Vol.25 July 2005 」P17~18
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コメント
最近このサイトを見つけました。タイに住んでいます。花は好きなんですが名前が判らず困っていたんです。そちらと共通の花木がたくさんあり大変勉強になります。この花は私も門のアーチにしています。今でも咲いていますが4月頃にはよく咲き長持ちする花です。タイではマライトーンと言いますが英名(普通の名前)が判りませんでした。今後ますます種類が増える事を期待しています。
投稿: kei | 2006年11月 4日 (土) 23時42分
keiさん
タイからのご訪問ありがとうございます。いいなあ、庭がある生活。熱帯植物って面白いですよね。毎日毎日知らないものに出会える国にいられることに感謝と同時にその果てしなさに気が遠くなっています。
投稿: TOM | 2006年11月 5日 (日) 07時23分
タイの園芸店で最近売られているのをよく見かけます。
その優雅さから、やはりポピュラーになりつつあるのでしょう。
しかも価格は1鉢50B(150円)ぐらいと安い!!
思わず買ってしまいました。
日本への一時帰国時に少し持ち帰って、植物園への導入を企み中。
投稿: 山東 | 2010年7月12日 (月) 18時28分
山東さん
植物園への導入ができたら、教えてくださいねー。けっこう修景効果があると思うんだけどなあ。
投稿: TOM | 2010年7月13日 (火) 23時46分