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2006年7月23日 (日)

古代植物 マツバラン

Psilotum nudum

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マツバラン科 Psilotaceae

原産地:世界の熱帯・亜熱帯に広く分布 日本では暖帯に分布

Common name: マツバラン、ホウキラン、Whisk Fern

シンガポール植物園の進化園(Evolution Garden,エボリュションガーデン)のお勉強をしていて知ったのが「マツバラン」。いや正確にはマツバラン(松葉蘭)の名前と植物そのものは知っていました。でも「ランというからにはランの仲間なんだろうか」なーんてボケなすなイメージを持ったままの曖昧な植物の1つだったのでした。今回、マツバランについて頭の中がクリアーになったのが収獲の1つかなぁって思うのでUP!!

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大きく育って高さは30smくらい。写真のように茎が2つに2つに分かれていくのが特徴です。(二股分岐といいます)

葉の先の部分の写真。2つに分かれていくのがわかります。

マツバランはランではありません。それどころか被子植物でも種子植物でもなく、シダ植物の一番古いところに位置する植物。シーラカンスとかを「生きている化石」と言うでしょ。マツバランは地上の植物の「生きている化石」の筆頭株らしいです。つまり地上に最初に上がった植物が、一番原始的な姿のまま何億年も生き続けてきたような格好の植物なんだそう。

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そんなわけで厳密な意味では根も葉もまだ存在しない植物なんだそうです。地上茎を見るとこんな小さな突起があって、これが葉かな?って思うんだけど、実際は葉と呼べるような構造を持っていないんだって。茎の表面に見える白い斑点は「気孔」なんだって。

古い地上の植物なので、種子ではなく、胞子で増えます。下の写真の茎にくっついている小さな丸い粒々が胞子の入っている袋です(胞子嚢2_2

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胞子嚢の拡大写真。実際は2mmくらいしかないすごく小さなものです。上の写真の茎の突起の付け根に1個ずつ付いています。最初は緑色ですが、熟すると黄色になり、最後には先っちょが裂けて胞子を飛ばすんだそうです。緑の茎にいっぱい黄色の粒々が付いた姿はけっこうかわいらしく見えます。

胞子嚢は3つに分かれていて、中には白い粉が入っていました。これが胞子なんでしょうね。粉はサラサラでした。 8 9

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根元からはこんな芽(?)が出ていました。

マツバランは大体は着生植物なのだそうで、木の幹にくっついたり、岩にくっついたりして暮らしているそうです。まれに地上に生えることもある…と本には書いてありますが、多分、地上で普通の状態だと他の植物との競争に負けてしまうので、そういったほかの植物があまりいない場所を選んで生き残ってきたのでしょう。

マツバラン科は1属2種しかない科で、植物学者に言わせると「たいへん風変わりな印象を与える植物」なのだそう。(TOMにはただの植物に見えるが…)

そのわけは「全生活史を通して根がない」から。「小型の水生植物のように、特殊な環境に適応して根が二次的に退化した例は知られているが、もともと根がないと思われる植物はほかにはない。」のだそうだ。

でも実際には、地下茎みたいなのがあって、毛のような根っこがいっぱいついてる。でもこれは「根毛状の毛である仮根」であって根ではなく、地下茎も「根の先端をおおう保護組織である根冠を持たないので、根といえない」と資料には書いてあった。よくわからんが、根とか茎とか葉と呼ぶには、植物学的にはある決まりがあって、マツバランの根や葉に見えるものは違う と言いたいわけだな…。資料には畳み掛けるように「地下茎の表面につく仮根は毛であって、決して根ではない。」とまで書いてありました。ハイハイ、わかりました。

こんな熱帯植物のブログで取り上げましたが、マツバランは日本人には馴染み深い植物のひとつです。気がつかないだけで、関東以南に住んでいる日本人はどこかで見かけたことがあるんじゃないかなと思います。花屋で購入した鉢植えの下に生えていたり、そんなのをTOMは日本で見ていました。

江戸時代に「金のなる木」と呼ばれていた、高値で売買されて投機対象となっていた植物達があります。具体的にはタチバナ、オモト、フクジュソウ、セッコク、ソテツなどの植物達でした。この中に含まれていたのが、「マツバラン」です。江戸後期1836年に出版された「松葉蘭譜」には奇妙キテレツなマツバランが90種ほど紹介されています。下記の資料にはその絵が載っていて、これに大金を払う江戸の粋な人たちの気持ちがわからず、TOMは大笑いをしましたよ。

もっと詳しい説明が見たい人はコチラをどうぞ。

資料:朝日新聞社 植物の世界 P12-93

   「江戸のガーデニング」 青木 宏一郎 平凡社 P66

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コメント

シダ類なのに
マツとランが名前に付いているのですね。
気孔は全体にあるのですか?
だとしたら、ものすごい呼吸量なのでしょうか・・・
きっと酸素もいっぱい出るのかしら。

投稿: ryu | 2006年7月23日 (日) 23時52分

ryuさん こんばんわ
気孔は茎みたいなところに全体にあるようですよ。でも普通の植物は、葉に気孔がいーっぱいあるわけだから呼吸量にそんなに差が出るとは思わなかったのだけど…。どうなんでしょうねぇ。二酸化炭素が今よりずーっと多い時代に進化した植物達の呼吸方法ってよく考えてみれば今とは違うかもね。うー、わかんなくなってきたよー。

投稿: TOM | 2006年7月24日 (月) 03時25分

ふーん、おもしろいですねえ。
進化の過程を目の当たりにする感じ。

興味深い記事をありがとうございます。

ポチっとしていきますね。

投稿: Shumho | 2006年7月24日 (月) 10時35分

shumhoさん
ポチッとありがとう!私もポチッとしてきましたよ。進化の過程を感じてくださってありがとう!でもTOMは説明を受けないとどこが古いんだか全然わかりません!難しいね!

投稿: TOM | 2006年7月24日 (月) 11時32分

このマツバランって前TOMさんが紹介していたクックソニアの仲間の生き残りじゃないんですか!?だとしたらものすごい歴史をたどって今は鉢植えの下とかに生えているんでしょうね(笑)
江戸時代の人が何種類もマツバランを作ってたのこの前TVで見ました。ほんと何種類も種類があって大金をだしてそれを買ってたなんてびっくりですね。そのマツバランを買って大満足の江戸時代の人の姿が目の前に浮かぶようですよ!!

投稿: 新井 暁子 | 2006年7月29日 (土) 21時50分

新井さん
見てくれてありがとう!若い読者がすっごく嬉しいよー。そうそう、クックソニアに一番似ているものと言われています。そのまま生き残っているのかどうかはわからないんだけどね。そのテレビが見たかったです。日本人は昔から相当なオタクな人種だったのではないかなと園芸の歴史を見ていると思います(笑)

投稿: TOM | 2006年8月 5日 (土) 09時06分

この記事へのコメントは終了しました。

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