セピロクの森でのナイトウォーク
昨日紹介したオランウータンのリハビリテーションセンターはカビリ・セピロク保存林の中にあります。カビリとセピロクというのはこの保存林の中を流れている川の名前なんだそうです。
この森は、1931年、第二次世界大戦以前にサバ州で一番最初に保存林に指定されましたが、この時は熱帯雨林を守るための指定ではなく、「熱帯林経営技術の開発と木材の生産」を目的としたものでした。しかし1957年の政策変更によって「純粋な保護と研究」が目的となり、現在では、「空から見ると原生林との区別がつかない」くらいの森に回復しているそうです。
ここまで森が回復できたのは、
①伐採時代から巨大な商業木だけを切るという選択的な伐採が行われてきたこと
②1957年の伐採終了後に目立った盗伐がなされていないこと
からで、比較的よい自然林が残った上に、50年近く天然更新をしてきた結果が今の森なのだそう。
1960年以降、実際にボルネオ島のあちこちで行われてきた重機を使っての伐採や、プランテーションのための大規模な伐採の後には、こんな早い形での回復はありえません。ボルネオ島の中ではある意味とても運のよい森と言えるかもしれません。
現在の保護区は低地混交フタバガキ林とマングローブで構成され、広さは43平方kmです。
リハビリテーションセンターでオランウータンの餌場を見学した後、TOMたちは特別にロッジのスタッフにお願いして、夕方6時からこの保存林のナイトウォークに出かけました。料金は1人1時間25RM(約30円/RM)で2時間お願いしたので、親子で100RM。(友人親子と出かけていたので4人とガイドさん1人の計5人で歩きました)
リハビリテーションセンターは16時には閉まってしまうのですが、入り口の門には警備員さんがいます。ガイドさんは門の前で待っていてくれて、許可をもらって中へ入れてもらいました。
子どもが「Flying squirrel(ムササビ)が見たい!」とガイドさんにリクエストをしたせいか、まずは昼間にオランウータンを見た餌場の立ち見台に行き、待機。
夜の森は昼の森とは全然違う雰囲気で、聞こえてくる音も時間と共に変わっていきます。特に昼間とは違うセミが何種類か鳴き始めて、薄明かりの中、浮き上がる木々の姿は本当に幻想的で、何も動物を見れなくてもこの中にいられただけでも満足…と思えるくらいでした。
サイチョウ(hornbill)がウホウホっと鳴きながら飛んでいくのを見たりしながらどのくらい待ったでしょうか?
ガイドさんの手招きと指示で、1本の高い木に注目したTOMたちは、穴から顔を出したムササビの目が懐中電灯の光でキラリンと光ったのを見ることができました。
間もなく、ムササビは木をのぼって近所の別の木へ滑空!おおー、テレビじゃないのをはじめて見たよー!!感動!!
うちの子はけっこう目がよくて、あちこちでムササビが木に登って行くのを発見してくれて何回も滑空する様子を見ることができて、TOMたちはみんな大満足。
上の写真の木の上の方にかすかに影があるのが分かりますか?
そうこうしているうちに辺りは真っ暗になり、いよいよ本当のナイトウォークに歩き出しました。
木道をしばらく歩いた後、いよいよ土のトレイルに入ります。雨の後だったのか、けっこう道がジュクジュクしていて、泥にはまったりしながら歩きました。
歩く時にはリーチソックスが必要と言われていたので、事前にシンガポール植物園で購入してきたリーチソックスをTOMたちは履いていました。(TOMにはmarikoさんが貸してくれた…)
リーチソックスってなんだか知ってますか?
ヒル避け用の大きな靴下のことです。
シンガポールでヒルにお目にかかることはないんだけど、マレーシアの森ではよくお目にかかるのでマレーシアに出かけるときには必須アイテム。おしゃれじゃないので、うちの子はいやがっていたけど、無理やり履かせ、長袖のシャツを持たせて出かけていました。
本当はTシャツのすそはちゃんとズボンの中に入れて、長袖もちゃんと着て…とすると良くて、TOMはちゃんとしてたんだけど、おしゃれじゃないとか、暑いとか文句を言うので「もう知らん」と思った母は警告だけはちゃんとしてほっときました。
いやあ、出る出る。ヒルくん。
軽装の子ども達が餌食。でもくっついた時点で子どもは何故かすぐわかるんですね。「りーーっち!!」と同行のAkkey(友人の子ども)がガイドさんに知らせて、血を吸われる前に取ってもらい、流血沙汰はこのときは逃れることができました。(ゴメン、TOMはまだ慣れなくて触れないのだよ…)
うちの子もTシャツの中に入られて、ものすごくショックを受けたようで、それ以降は素直に厳重すぎるくらいに長袖シャツを着てましたよ。いやぁ、経験に勝る教訓はないですねぇー。(ニヤリ…)
下記資料では安間氏は「夜間保存林を歩くと、ベンガルヤマネコ、ジャワジャコウネコ、マメジカ、幸運であればメガネザルにも遭遇できるかもしれない。」と書いていたので、ネコ科動物フリークのうちの子は期待いっぱいでしたが残念ながら、ネコ科には会うことはできませんでした。
でもマメジカには出会えたし、小さな生物はちょこちょこ、大きな板根はいっぱいでナイトウォーク…楽しみました!
安間氏の本には「探索道は全て手すりのある木橋になっており、ここでオランウータンをはじめ、ブタオザルやカニクイザル、バナナリス、ミケリス、ボルネオコビトリスなどをほぼ確実に見ることができる」と書いてありました。また「日中に奥地をトレッキングすればヒゲイノシシやマメジカ、オランウータンに出会うだろうし、途中の沢では数頭のコツメカワウソを見ることがあるかもしれない。」とも。
今回は時間がなくてゆっくりできなかったけど、これはじっくりと昼間もトレッキングしなきゃもったいない!って思った場所でした。何にしても往復で何時間もかかるようなので、ちゃんと準備をして、ガイドさんをつけて歩いたほうがよいようです。
参考資料:「ボルネオ島 アニマル・ウォッチングガイド」 安間繁樹 文一総合出版 P66
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