« ボルネオ象 | トップページ | エコツーリズムの正体 »

2006年8月 5日 (土)

ヤシ畑

Elaeis guineensis

Photo_227月29日から8月1日までの3泊4日でボルネオ島のサバ州に動物を見に行って来ました。

ジョホール(マレーシア)の空港から2時間40分でボルネオ島の北東にある町サンダカンに到着です。写真はサンダカン到着直前の空からの写真。空から見ると、土地がどんな風に使われているのか一目瞭然。

左の写真なら上部が森、下部は川と草原ですね。

そんな中、一面に広がっていた風景が下の写真でした。

なんだ? ヤシ畑です。一面に広がるアフリカンオイルパームの畑でした。

2_6

4_2

この後に続く写真は、2日目にセピロクからスカウに向かう途中のバスから撮ったヤシ畑の写真。

今回のボルネオ旅行では、何時間もヤシ畑の中の道を車で走って、テングザルたちの住む森へとTOMと子どもはたどり着きました。バスのガイドさんは「長い道のりだからゆっくりしていってねー。寝て起きてもヤシ畑、またまた起きてもヤシ畑だから、景色は変わらないから安心して寝ていいよー(英語だから、この通り言っていたかどうかはちょっと危ういのだが)」なんて冗談を言っていましたが、その通り。

Photo_20走っても走っても見えるのはヤシ畑。ずーっとヤシ畑でした。

TOMがシンガポールに来ることになったとき、熱帯雨林についての知識はほとんどありませんでした。TOMは日本では大学で造園を勉強し、造園・環境関係の仕事をしてきたんだけど、それでもこんな程度だから日本で都会生活を満喫している人はもちろん、ガーデニングで緑を楽しんでいる人たちでさえ、熱帯雨林についての知識がほとんどないのはアタリマエなのかもしれません

8_1んなんだから、シンガポールに来るまでは、赤道直下の東南アジアの地域は減少しているとは言っても熱帯雨林でいっぱいなんだろうなあ と思っていました。

だからはじめて車でマレー半島に出かけたときの衝撃は忘れられません。(シンガポールからほんの車で30分で橋を渡ってマレーシアに入れるのです。)
見渡す限りのヤシ畑!
熱帯雨林はどこ?ない!ない!全然ない!
熱帯雨林は地球全体の気候を調節する場所なんて言われてるけど、こんなんでいいのー???

数限りない種類の生物が住んでいたはず の熱帯の森だったところが、今はこんな状態です。
こちらのヤシ油を使って作られた環境に優しい(?)製品日本人の多くは、環境にやさしいと信じて安心して使っています。

いいのか?

7

これでいいのか?

シンガポール植物園のビジターセンターには、アブラヤシが植えられていて、TOMたちガイドはまず最初にアブラヤシの紹介をし、日本で環境に優しい石鹸やシャンプーと言われている製品の材料のヤシ油が、熱帯雨林の減少の原因の1つになっているんだよという説明をします
シンガポールに住んでいる日本人なら、一度はマレーシアに出かけ、見渡す限りのヤシ畑を見ているので、それがどういうものなのかを知ってもらいたいと思っているからです。

6_1

その中で時々出る意見が「同じ緑なんだから、熱帯雨林でもヤシ畑でもどちらでも問題はないんじゃないんですか?」というもの。

一言で言えば、「熱帯雨林は生物の多様性がある けれど、アブラヤシは1種の植物しかない」というのが問題なんだけど、長くなるので、これについてはまたの機会に…。

5_2

「アブラヤシのプランテーションがあることでマレーシアの人々が潤っているのは確かなのだから、それを使って安価にものを手にいれている日本人があれこれ言う権利はない」という意見もあります。
そうかもしれません。でも、多くの日本人が「環境にやさしい」という「うたい文句」を信じて使っている製品の多くがこういった原材料を使って作られているということを「知ったうえで選択」する必要はあると思うのです。

Photo_23

2_7

アブラヤシの実は道路端に集められ、集積場に集められて、工場に持っていくようです。上の写真は集積場と思われる場所の写真。

先日NHKの朝のニュースを見ていたら、化石燃料に替わって、ヤシ油を使った燃料で走る車をトヨタが開発。2009年くらいからヤシ油から作る燃料生産をマレーシアではじめるという話をしていました。化石燃料を使わないから「環境にやさしい画期的な試み」というような扱いだったと思いますが、家族達が異口同音に「これ以上、ヤシ畑を作るんですかー??」って朝っぱらから叫んでしまいました。
でもNHKでそう言っていたら、日本人の9割方が「環境にやさしい画期的な試み」って思うわな。
化石燃料をこれ以上使うのは良くない。それはわかってる。わかっていながら、今も電気を使ってTOMはこれを書いてるし、おまけにクーラーもつけてる。
でもね。でも…なんだよぉー!!
日本の学校ではこんなことをやらないんだろうなぁ。
シンガポールの小中学校でもやっていないだろうなぁ。
でも、知らないでいいのか?グローバルに地球をこれから背負ってく子ども達!

サバ州では年間に州面積の1.2%、9万haくらいがアブラヤシのプランテーションに変わり、残存森林面積率は51%。けれどもその大部分がすでに手つかずの熱帯雨林ではありません。ここ30年間で森林の30%が焼失し、対してアブラヤシ畑は25年間で15倍。2003年には州全体の15.3%にのぼっています。サバ州は東南アジア最高峰のキナバル山があり、エコツーリズムの盛んな場所で、熱帯雨林の動植物を見るために世界各地から先進国の人々が訪れています。でも現実はこうだということだけ知っておいていただけると嬉しいです。

熱帯雨林は有限の資源で、その生物の多様性は一度失われたら、二度と取り戻せません。何千万年もの自然の営みの中で進化と絶滅を繰り返して作られてきたものということを、私達はもうちょっと知ってもいいような気がします。

色々なホームページの紹介です。見てみてくださいね。

ヤシ油を使った石鹸のなにが問題なのか知りたい方は見てください。http://www.jca.apc.org/unicefclub/research/93_palm/index.html

サバ州の地図: 右側に表示のあるLower Kinabatanganが今回TOMたちが行った場所
http://www.bbec.sabah.gov.my/TheMap.htm

サラヤという会社のホームページ ボルネオゾウとアブラヤシとの共存を模索していますhttp://www.saraya.com/env/05env8_3.html

アブラヤシの説明はこちらです。見てね!

ブログランキングの投票にご協力を!…ぽちっ

|

« ボルネオ象 | トップページ | エコツーリズムの正体 »

コメント

知らなかったことだらけです。
いろいろなホームページの記事ももう一度じっくり読みます。
考えるきっかけを与えて下さり、ありがとうございました。

投稿: kusaki | 2006年8月 5日 (土) 22時02分

ほんとですね。

今日もかしこくなりました。
ニュースもうのみにせず、自分自身で考えなければいけませんね。

ぽちっ。

投稿: Shumho | 2006年8月 6日 (日) 09時20分

Kusakiさん Shumhoさん
ちょっと説教臭いかなと思いつつ、でも書きたかったことだったので書いちゃいました。考えるきっかけになっていたらすごく嬉しいです。コメントを寄せていただくと元気が出ます。いつも本当にありがとう!

投稿: TOM | 2006年8月 6日 (日) 10時19分

この記事へのコメントは終了しました。

« ボルネオ象 | トップページ | エコツーリズムの正体 »