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2006年9月 1日 (金)

アブラヤシと日本人

アブラヤシネタ…今日でひとまずお休みしますので、我慢してお付き合いくださいね。

1_16 アブラヤシは赤道近くの高い温度と湿潤な気候が好きなので、日本ではあんまりお目にかかりませんよね。それでも今まで何回もブログのネタにしてきたのには理由があります。
ヤシと言えば南国のリゾートに植えられているココヤシくらいしか、日本で暮らしていると思いつかないでしょ。でも「僕らの食生活は、いまやヤシの仲間なしでは成り立ち得ないほど、彼ら(ヤシの仲間)に依存している」と「ヤシの実のアジア学」の中に書かれているように、アブラヤシなしの今の日本人の生活はありえないんです。だからボルネオやマレー半島の広大なヤシ畑が私達の生活と無関係でないことを知ってもらいなーと思って、ちょっとくどく書いてます。お付き合いしてくれてありがとう!

どう日本人の生活と関係しているか。
その辺のところを主に「ヤシの実のアジア学*1)」に書いてあることから、まとめてみました。

Photo_50 アブラヤシからは2つの油が取れます。タネをくるんでいるオレンジ色の部分、触るとベトベトします。鳥やリスが大好きで、シンガポール植物園のパームコートにはこの実を食べに動物達がやってきています。この部分から摂れる油を「パーム油(Palm oil)」(*2)と言います。その中にあるのがいわゆるタネの部分。この中にも油が含まれています。ここから摂れるのが「パーム核油(Kernel oil)」です。
これらが加工されて色々な用途に使われています。

Photo_51

今回は食用分野でのパーム油について。(*3

日本人が食用として消費する油脂*4)は1950年には1kg/年だったのが、1994年には18kg/年になったそうです。
うわ!!、18倍だよ~!
戦後の日本人の食生活は、「油を食べる生活への変化」だったんです。

その増えた油脂を担っているのは他ならないアブラヤシから作られる「パーム油」。

その証拠に、1994年の日本の輸入植物性油脂*5)の第3位がパーム油で37万トン(全体の15.9%)。1960年のパーム油の輸入量は1.3万トンだったそうだから、この30年あまりで約30倍。そしてそのパーム油の約7割は食用として消費されているそうです。

でもあんまりパーム油を食べているという感覚は無いですよね。「菜種油とか大豆油とかヒマワリ油とかコーン油はサラダ油でよく聞くけどパーム油なんてあんまり見かけないよー」って思うでしょ。パーム油は融点が38℃前後で、台所に普通に置いておくと、液体じゃなくて固まってる状態になっちゃうらしいです。それだと使いにくいでしょ。(主婦はわかるよね)だから今までは、家庭用のサラダ油にはパーム油は使われてこなかったんだって。

じゃ、何に使われるか?

まずは、インスタントラーメンスナック菓子(ポテトチップスなど)が2大用途。

食べてるでしょ、食べてるでしょ。
TOMはカップラーメン好きだよー、ポテチはあんまり好きじゃないけど、スナック菓子は大好き。
インスタントラーメンの誕生は1958年。パーム油のよいところは日持ちがよくて、しかも安価。今ではインスタントラーメン用の油脂の8割がパーム油なんだって。

あと、ファストフードチェーン店での揚げ油
日本のファストフードチェーン店では、マクドナルド以外(*6)は、「すべての揚げ油にパーム油調合の植物脂を使っている」んだって。
食べてるよー。バーガーキングでしょ、モスでしょ、ケンタッキーも好きだよー。

それから最近の動向としては、コンビニエンスストアの惣菜冷凍食品外食産業の調理済み料理でのパーム油の消費が伸びているそうです。ここでもパーム油の日持ちの良さが注目されているとか。
使ってるよー。日本製の冷凍食品。子どもの毎日のお弁当作りには欠かせません。シンガポールに輸入されると高いんだけどね、でも便利なんだもん。「高いよー」と涙流しながらも買って使ってます。それから、日本へ一時帰国すると…買います。コンビニのお弁当やスーパーのお惣菜。美味しくて安いからついつい買っちゃう。すかいらーくとかファミリーレストランもよく使ってます。

ねね。
アナタも知らず知らずに食べてるでしょ。アブラヤシの油。

あと、意外なところが「チョコレート」。チョコレートって口に入れると溶けるのがよいでしょ。これはちょうど体温くらいで溶けるカカオバターのおかげ。これと似た性質を持つのがパーム油やココナツ油。パーム油はカカオバターの1/10の値段なので、代用品として重宝されてるらしい。最近、暑くても溶けない夏用のチョコとかさっと溶ける冬用のチョコとか色々なチョコレートが出てるでしょ。パーム油やココナツ油からは「融点を調節した油脂成分を抽出・配合できる」ので、そういう色々な温度で溶けるチョコレートを作れるんだって。
あと、「アイスクリームのチョコレートコーティングには、ほとんどココナツ油やパーム油の代用油が使われている」んだって。
おおー、知らなかったよー。
TOMはチョコレートが大好き!今度から大好きなチョコを食べる時には原材料を見てみよう!

アブラヤシ畑1haからは1年に5トン*7)ものパーム油が採れるそう。

ネットで調べたところ2004年には全世界で3300万トン生産され、日本はそのうち約50万トンを輸入しているようです。

2_26 50万トンものパーム油を生み出してくれるヤシ畑。いったいどのくらいの大きさなんでしょう?
計算すると10万haのアブラヤシ畑が日本が消費するパーム油のために必要です。
東京23区の面積は620k㎡(6.2万ha)。東京23区のじつにまるまる1.6倍ものアブラヤシ畑
想像してみよう!
(ちなみに3300万トン分のヤシ畑は6.6万k㎡。日本の本州の約 1/3 です。うげっ、いっぱい。)

じゃあ、日本人一人当たりどのくらいのアブラヤシ畑を使ってるんだろう?
ちょっと計算してみました…。(上に出てきた数字とかを利用して…)

日本人を1億2千万人と仮定して…。

50万トン/年÷1億2千万人=4.17kg/年・人
5t/ha だから  5000kg : 4.17kg=10000㎡ : X ㎡
X=10000㎡×4.17kg÷5000kg=8.34㎡
8.34㎡÷1畳(0.9×1.8)=5.15畳/人
うわー、なんと私達一人当たり、4畳半のお部屋よりも広いアブラヤシ畑を使ってるんだねー!!!!
4人家族なら20畳!広いぞー!(TOMは小市民)
ちょっとびっくりな数字でした。

アブラヤシ畑は熱帯雨林を切り開いて作られています。
私達の「便利な食生活」や、「手に優しくて(日本の)環境に優しい洗剤」の裏に、1人あたり5畳以上の熱帯雨林の消滅が隠れている…って思うと遠い国の熱帯雨林のお話が少しは身近に感じられるようになりませんか?

もっと知りたくなったら…パーム油を考える 峠隆一 PDFファイル

               ライオントップCMへの要請書 と 要請書へのコメント

へぇー、びっくり!って思ったら、ブログランキングの投票にご協力を!…ぽちっ

*1: これは1996年11月に出版されている本なので、データは90年代はじめ頃のものが最新です。でも日本のアブラヤシを取り巻く社会環境はさほど変化しているとは思われないので、ここであげられている数字は増えこそすれ、減ってはいないのではないかなと思っています。

*2:ちなみに「ヤシ油」はココナツの胚乳から採れる油。

*3:食用以外には洗剤を作ったりするのに使われていますが、くどくなるのでやめます。検索とかして調べてみてくださいね。いくらでも出て来るよー。

*4:油脂というのは動植物系のオイルのこと。液状のものを「油」、固形のものを「脂」という。

*5:ちなみに「1位:菜種油(81.2万t)」「2位:大豆油(64.5万t)」「3位:パーム油(37.0万t)」

*6:マクドナルドは動物脂を使ってるんだって。80年代に「アメリカ大豆協会」が「パーム油には動物性脂肪と同じで飽和脂肪酸が多く、コレステロールが溜まるので健康に悪い」というキャンペーンをしたので、市民にパーム油への警戒感が広まったから…だそう。

*7:「A Guide to Palms & Cycads of the World」 P98 の記述より 

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コメント

ヤシ油がこんなに需要があるのなら、
「企業のプランテーションで現地の森や自然が破壊されている」というWWFの話も一理あるのですね。
しかし・・・
アブラヤシの油 そんなに食べてたんですね私。
ちょっとショックです。
個人的に アブラヤシ≒アブラゼミ みたいなイメージだし・・・(・0・)!
これからちょっと見方が変わるかも。

投稿: ryu | 2006年9月 3日 (日) 09時05分

ブログの内容は本当に勉強になりました。感謝です。とくに今日本語作文で「森を大切にしようとか、環境保全に貢献しよう」というのが書いています。参考になりました。日本に暮らしながら冷凍食品や加工食品があんまり食べない私はおかしいと、時々考えました。でも、このブログを少し読んで安心になりました。東カリマンタンのジャングルで生まれ育った私なので果物や野菜をおやつにしています。「時代おくれ?」でも健康に抜群ですよ。娘たちも予防注射しないで元気で季節ごとを乗り越えました。では、いっぱいの感謝です。「このブログを気に入りにいれました」

投稿: Anyan Lenyoq | 2010年10月21日 (木) 13時58分

Anyan Lenyoq さん
コメントありがとうございます。お返事が遅すぎてみられることも無いかなと思いつつ、書いています。
東カリマンタンで育ったのですね。貴重な子ども時代を過ごされましたね。そういった経験を本当は直接聞いてみたいし、どんどん日本の方にも伝えたいと思っています。もし、またこちらをご覧になることがありましたら、是非お教えくださいね。日本人でも冷凍食品や加工食品が好きでない人はたくさんいますよ。民族が違っても変わらない部分はきっとあるのだと思います。

投稿: TOM | 2010年11月30日 (火) 11時20分

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