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2006年10月19日 (木)

シンガポールの落葉の季節

mさんからこんな質問メールをいただきました。

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熱帯、特にシンガポールには落葉の季節はあるのでしょうか。

7月の終わりに日本から旅行で来星した方を案内していたら、その方が「こちらにも落葉があるのねー。」と言われたのです。確かに黄色く色づいた葉がたくさん落ちていました。
落葉は冬への準備というイメージがあって、年中夏のこの国とは結びつかず、深く考えた事がありませんでした。種類によるのかもしれませんが、気をつけて見ていると、茶色く枯れた葉が落ちている木も。…後略

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2_54うーーーん。TOMが見ている限りでは。
落葉の季節…。シンガポールでは明確にはないように感じます。
それぞれの木ごとに、てんでんばらばら、落葉の季節を迎えているように見えます。

TOMなりにこうじゃないかな?と思ってるものはあったんだけど、考えれば考えるほど「じゃあ、この場合は?」とかこんがらがってしまったので、いつもお世話になっている先生に聞いてみました。

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①結論を言うと、シンガポールが原産の木で「一度に落葉する性質を持っている」木はあまりないそうです。

②でもタイなどに行けば乾季・雨季がはっきりしているので、乾季に一度に落葉する性質を持っている木がたくさんあります

③あと、南アメリカのタベブイアなどは雨季乾季がはっきりした場所ではなくても、落葉してから花をつけたりする そうです。葉が無いほうが花粉を運んでくれる虫の目に付きやすくて有利だからではないかとお話されていました。

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後はTOMの補足です。おかしなところがあったらご指摘ください。

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葉は…、熱帯でも落ちます。
日本の常緑樹のクスノキとかでも、いっぺんに葉っぱが落ちることはないけど、葉っぱの寿命が来ると、ぱらぱらと落ちていたでしょ。私達の髪の毛とかも寿命が来ると抜けちゃうよね。おんなじです。

mさんが見たのは多分「いっせいに葉っぱが落ちて、いっせいに葉っぱが出て来るタイプの木」。日本の落葉樹のようですよね。寒くなんかならないのにどうしてシンガポールでいっせいに葉っぱを落とす必要があるの?って思うのは当然だと思います。

1_50先生のお話だと、「シンガポール原産の木ではそういった性質を持つものはあまりない」ということなので、シンガポールで葉っぱをいっせいに落としている木は、どうもシンガポールではなくて、別の地域原産の木が多いようです。一番上の写真はシーフィグというイチジクの仲間ですが、時々こんなふうにいっせいに葉を落として、きれいな若葉をいっせいに出しています。とてもきれいです。

シーフィグの原産地は「1001 Garden Plants in Singapore」P371では「日本、中国、インドシナ、マレシア、熱帯オーストラリア」となっていて「シンガポールも原産地の1つなのに落葉するよ。どうして?」と思っていましたが、先生のお話だと「分布範囲が広いから…」というニュアンス。TOMは、「シーフィグなんかの場合は、今は赤道をはさんで両熱帯・亜熱帯にひろく分布しているけど、本来は赤道直下でないところで進化してきたものだから、シンガポールでも落葉する性質を持つんじゃないかな」と思うんですが、どう思う??

さて。根本に話を戻します。植物が葉っぱをいっせいに落とすのは何故なんでしょう?

寒かったり雨が少なかったりで、葉っぱを付けてても得るものよりもロスのほうが大きいと「面倒臭い…、えーい、休んじゃえー!」てな具合で、葉っぱを落としちゃうように進化した植物達…これが一般的な落葉樹。大きな原因は「温度と水」です。

同じ熱帯地域でも、北回帰線や南回帰線に近いほうに行くと、季節風の影響を受けて、雨季と乾季がはっきりと分かれる地域(シンガポールの乾季雨季と違って乾季にはほとんど雨が降らない)があって、このあたりには乾季に落葉する植物がいっぱいあります
日本の冬から春への変化と同じように、乾季は葉っぱを落として休息を取り、雨季に向けて花を咲かせ葉っぱを出し実を結ぶタイプの植物熱帯にもあるわけ。

シンガポールは赤道直下で、乾季と言ってもまったく雨が降らないわけではなく、植物が葉っぱを落とす必要はありません。でもシンガポールにはそんな熱帯季節林(雨季と乾季がある森)で進化してきた植物がたくさん導入されていて、その子たちが故郷での習慣を忘れられず、葉っぱをてんでんばらばらの季節に落としているんではないかなとTOMは予想しています。

シンガポールの街中で見られる植物のじつに8割が外来種なんだそうです。東南アジアだけでなくて、アメリカやアフリカの熱帯地域からとってもたくさんの植物がやってきています。とーってもグローバル!

ガーデンシティを作るために世界中の熱帯・亜熱帯から植物を導入し、うまく育ったものの中から、ガーデンシティの構築に役に立ちそうな樹種を積極的に植樹した結果なんだって。緑陰を作るもの、きれいな花を咲かせるものなどが初期には積極的に植えられました。

その結果が「てんでんばらばらに落葉しているように見える樹木たち」なんじゃないかなぁ。どうでしょう?

でも先生のお話の③によると、落葉樹はそれだけではなかったんですね。花粉を運んでくれる虫や鳥の目に付きやすいように、あえて葉を落とすものもある ってことをはじめてTOMは知りました。

下の写真はシンガポールでのタベブイア。この写真では葉がいっぱい付いていますが、確かに5月頃花がたくさん咲く頃のタベブイアは、葉がたくさん落ちてしまってつるっぱげ状態に近いものもたくさん見られます。

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それぞれの樹木が葉を落とす原因は、樹木たちの原産地での暮らし方を見ればたぶん一目瞭然なんだろうな。でも私達は世界各地を旅行して歩くわけにはいきません。今、目の前の樹木たちの様子を見て、どうして?なぜ?って思いながら、原産地での暮らし方を想像するのも楽しいなあってTOMは思います。

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