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2006年10月23日 (月)

イチジクの花の謎

こちらのブログでは頻繁にイチジクという言葉が出てきます。でもこれは私達が普段日本でスーパーで買ってくるイチジクそのもののことではなくて、イチジクの仲間たち(クワ科イチジク属に属する植物達)のことを指しています。

1_52 シンガポールで散歩をしていると本当に色々な木に出会うし、実がなっているものがいっぱいあるんですが、それらを見分けためにTOMたちはとりあえず実を割ってみます。食べるイチジクのように粒々したものが中に入っていれば、「あ、これもイチジクちゃんの仲間だ!!」って思うわけ。

森はもちろん、公園や住宅街を散歩しているときも、とっても色々な種類のイチジクの仲間に出会います。

前にも書いたようにイチジクの仲間たちは、熱帯の動物達の大切な食料源になっていて、熱帯の生態系の中でとても大切な役割を持っています。

そんな風にいっぱい種類があって、よく出会うイチジクちゃんですが、実はしょっちゅう見かけるけれど、花は全然見かけません。…でしょ??

漢字で「無花果」と書くことからもわかるように、3000年に1度しか花を咲かせない、花がとてもレアーな植物だからです。

なーんて書くと集中攻撃を受けそうだな…。
真っ赤な嘘です…。ごめんなさい。

花はいつも咲いています。どこに??
私達の目に付かないところでひっそりと…。

ちょっと寄り道。植物がお花を咲かせるのは何故でしょう?

目立つ花色をつけたりして、「ここにお花があるよー」と虫や鳥などにお知らせするため。つまり私達が普段、「花」と思って見ている花は広告塔なんです。目立つ花を見つけてもらって「オシベの花粉を別の花のメシベの柱頭に運んでちょうだい! 」というのが花の役割。

イチジクの場合は、確実に仲間の花に花粉を運んでくれる重要なパートナーを持っているので、別に花は目立たなくていいんです。

上の写真なら、内側にびっしり付いているのがたくさんのお花の部分。(ただし、この写真の状態が蕾なのか花なのか花の後なのか定かではナイ…)

なので、私達が想像するような「花らしい花」はなくて、ひっそりと人知れず花が咲いているので、「イチジク=無花果」なんて呼ばれちゃうわけ。

ここで登場した「重要なパートナー」、これが「イチジクコバチ」です。

イチジクの花粉はイチジクコバチ科に属する昆虫だけが運びます。イチジクとイチジクコバチの間には「植物1種に昆虫1種が対応する厳密な関係」があり、「2種類以上の生物が互いに影響を与えながら進化する「共進化」とよばれる現象の、最も顕著な例であると考えられてきた。」のだそうです。(「植物の世界」P8-142)

つまり1種類のイチジクには1種類のイチジクコバチが大切なパートナーとして存在しているわけ。

そんなわけでTOMたちがイチジクの実を開くと時々イチジクコバチが中にいるんですが、先日正体不明だけど確実にイチジクであるイチジクちゃんのイチジクコバチの写真が撮れたので、花の受粉のヒミツと共にアップです。

1_53

正体不明のイチジクはこれ。

ブキバトネイチャーパークで、5mくらいの高さの木の下に1cmくらいの大きさの黄色い実がたくさん落ちていました。

木にくっついていた方が見えているのが左、その反対側が右です。2_56

イチジクの中にお花が咲いているからには、この中にイチジクコバチは入らないといけません。そのための「入り口」が必要です。

右側の写真をアップにしたところ。よくわからないかもしれないけれど、この先っちょのところが入り口になっています。

花粉を持ったイチジクコバチのメスはここからイチジクの中に入り込みます。この部分はたくさんの鱗片でおおわれた小さな穴になっていて、中でお花が咲いているときはこの鱗片が少し緩むんだそうです。

イチジクコバチのメスはこの穴からイチジクの花序花嚢かのうと言う)中に入り込んで、中に咲いている雌花虫えい花に卵を産みつけようとします。雌花はメシベの花柱が長いのでメスは卵を産み付けられませんが、中えい花は雌花の中にあって雌花と同じようなものなんだけど、花柱が短いので卵をうまく産み付けられるんです。このとき片っ端から卵を産みつけようとするので、雌花は受粉でき、熟してタネを付けることができます。

卵を産んだメスは役割を終えてここで死んでいきます。

3_38 

上の写真は開いたところ。小さな瑠璃色に光る虫のようなのが見えました。動きません。もしかしたら、これが卵を産んで、花嚢の中で死んでいったイチジクコバチのメスなのかもしれません

もっとよく観察します。茶色の透明な虫がもぞもぞ動いているのが見えました。

4_27

わかりますか?

メスは虫えい花の子房の中に卵を1つずつ産んで幼虫は1匹ずつ1つの虫えい花の中で、子房を食べてさなぎになり、羽化して花の中から出てきます。

まず最初に出てくるのはオスなんだそうです。オスはまだ虫えい花の中にいるメスを見つけて交尾をします。そしてその後、メスが出てくるのだそう。

8_12 この茶色の透明なのはオスのイチジクコバチです。とにかく小さい!!TOMの手のしわがわかるくらいに拡大しています。アゴが発達しているのがわかりますか?

交尾を済ませた後、オスはメスが外に出るのを手伝って、花嚢の中で死んでいくんだって。だから目も見えないし、羽もありません。

下の写真はまだメスが虫えい花の中にいて黒いのが中に入っているのが見える様子と、もう出てきちゃって空っぽになった様子。わかる??

9_6

そうこうしているうちに黒いメスが出てきました。

7_16

メス目も見えて、羽があって…と聞いていたけど、本当だー。オスと全然違います。大きさも少し、メスの方が大きい感じです。

でも小さいことに変わりありません。

交尾を済ませたメスはオスの助けを借りて、お母さんが入ってきた鱗片でおおわれた小さな穴を通って外に出て行きます。

下の写真は出口の様子。鱗片でおおわれた小さな穴の様子がよくわかりますね。

5_28

出口をもう少し拡大。

6_21

じつはこのとき出口のところに雄花が咲いています。雄花がどれかわかる?

うんしょうんしょ…と頑張ってメスは外に出ます。このときに花粉がメスにくっつきます。そして、メスはイチジクの花粉を体につけて、別の個体の同じ種類のイチジクのところへ、卵を産むために飛び立っていくんです。

あとは最初から繰り返し。

どう?よくできてるでしょ?

1cmにも満たない小さなイチジクの中で行われている恋の駆け引き…目の当たりにできて面白かったよー!!

補足はそのうち…。今日は時間切れです…(涙!)

資料:「朝日新聞社 植物の世界」

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コメント

イチジクコバチの様子、すご~く面白いです。虫えい花にまだいる様子と、もう出てしまったところはな~るほど!という感じです。
雄の顎が発達している様子もまじまじと見られてラッキーです。
でも、以前、そこら辺に生えている赤くなったイチジクをプチっとつまんで食べたことがあるけれど、ハチたちも一緒に食べてたのね・・・

投稿: keiko | 2006年10月24日 (火) 17時41分

素晴らしいですね。
今日も感動です。!
(ポチ)

投稿: Shumho | 2006年10月26日 (木) 09時30分

とても面白かったです。
外に出れるのはメスだけなんですね。
オスってかわいそうかも・・・
自然界のオスって実は弱者なのかしら。

投稿: ryu | 2006年10月26日 (木) 21時58分

Keikoさん、Shumhoさん、Ryuさん
お返事が超遅くてごめんなさい。いつもありがとうございます。イチジクコバチはコレだけではわかりにくいと思うので、イチジクコバチ物語をそのうち描こうと思ってます。こうご期待!!

投稿: TOM | 2006年11月 1日 (水) 15時02分

はじめまして。
観葉植物のウンベラータ等が好きで、イチジクに興味が出ました。
解説すごく面白く勉強になりました。しかも、イチジク実(花)の中や、イチジクコバチの写真つきで!
イチジクの戦略ってすごいですね。

投稿: けろ | 2010年3月 2日 (火) 21時58分

けろさん
コメントありがとうございます。あまりに遅いレスです。すみません。イチジクコバチは面白いですよね。本当に。また何か分からないことがあったら問い合わせて見てください。一生懸命探してお応えしまーす。

投稿: TOM | 2010年3月14日 (日) 11時33分

すごい!
なるほど!
ありがとうブログ主さん

投稿: いつ | 2010年9月 4日 (土) 13時51分

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