トルエンの木
Myroxylon balsamum
高さ35m、直径1mにもなる中南米原産のマメ科の木。
シンガポール植物園で新しくオープンしたエリア(正門近く)を歩いていたら、面白いマメの赤ちゃんが道に落ちているのをruiさんとyoukoさんが発見。「どこから落ちてきたのーーー?」と正体を探したら、この木の赤ちゃんでした。
葉っぱや花や実は遠い木の上なので、どんな形をしているのか分かりませんが、とにかく花がカワイイ!
ガクがカップ状になっていて、中から何本ものオシベが目立って出ています。花びらは4枚。(本当は5枚あるのか??)そのうち1枚は大きく(って言っても長さ1cmくらい)あとの3枚はおまけ程度の小さいのがついているだけ。
この白くて大きめの花びらで花粉を運んでくれるもの(白いからガか何かか?)を誘ってるんだと思うんだけど、いったい何が送粉をしてるんだろう?
総状花序で、下から見上げるとこんな風に見えます。マメの赤ちゃんもちゃんと付いてるね。
マメ科 Leguminosae
原産地: 中央・南アメリカ
Common name: Balsam of Tolu ,バルサモ
このたくさんのオシベの中にちゃあんとマメの赤ちゃんの子房が隠れていて、大きくなれなくて途中で落ちちゃった、こんなのもいっぱい落ちていました。全体で3cmくらいかな?ガクのカップとオシベがそのまま残っているのもかわいいと思わない?
もう少し大きくなるとこんな形になります。最終的にどのくらいの大きさやふくらみ具合になるのかはわかりませんが、熱帯植物要覧には翼果と書いてあったので、タネが入っている部分を重心にして、くるくる回って遠くへ運ばれていくのかな?と思いました。資料がなさ過ぎてよくわかりません。ゴメンネ。
見た目以外何にもわからなかったので、あとは資料の記述から。
熱帯植物要覧によると、材は赤褐色で光沢があり、とても重くて硬く、耐久性があると書いてありました。そのため構造用や橋、道具の柄、荷車、床板、家具、指物などに使われるそうです。樹脂のバルサムは軟膏や賦香料に使うともありました。
バルサムという言葉はなじみがなかったので、広辞苑で引いてみました。「植物から分泌される樹脂が揮発性油に溶解しているものの総称。松脂・カナダ-バルサムの類。香料などとする。服務油樹脂。」とのこと。
トルエンって科学物質の名前を聞いたことがあるでしょ。今は石油から作られているようなんですが、最初はこの木から抽出されたことによって発見されたんだそうです。昔はトルエンのことを「トルーオール(toluol)」と呼んでいたんだけどこれはトルエン発見の功労者「Tolu Balsam」の名を取って付けられたんだって。あ、英名の「Balsam of Tolu」は彼の名前から来ていたんだー。
トルエンは溶媒としてペンキや塗料用シンナー、ゴム、印刷用インク、接着剤、マニキュア、皮なめし、殺菌剤など色々なものを溶解するのに使われていて、私達の生活にも身近な物質。植物園で見たカワイイお花の木が、調べているうちに身近なことに関わっている事がわかって、けっこうびっくりしたTOMでした。
資料:「熱帯植物要覧」 P188
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コメント
トルエンって聞いてちょっとギョッとしたのは私だけ?!こんなに可愛いお花と幼い実からは想像できないけれど、すごいパワー(?)をもった木なんですね・・・って、植物から抽出されたものは石油から合成されたものほど強くはないかも・・・ともかく、植物って昔から人の生活に本当に深くかかわっているのね。人は植物なしには生きられないものね。便利な生活をしていると忘れがちなんだけど。(忘れがちなのは私だけかも・・・すみません・・・)
投稿: keiko | 2006年10月 8日 (日) 01時07分
落ちていると、絶対手にとって見たくなるかわいさですね。いつも色々調べていただきありがとう!散策に行くと、一度にわあーっと沢山の植物に出会い覚えきれない私も、こうやってTOMさんに1つずつ教えて頂いて、自然に植物の世界が広がっていきます。やっぱり積み重ねですね~~TOMパワー全開で書きまくってくださいねー
投稿: まゆり | 2006年10月 8日 (日) 11時37分
keikoさん
トルエンと聞いても溶剤としか思いつかなかった私は世間知らずなのかしら?いつも色々教えてくれてありがとう。そうそう。植物のおかげで動物や人間は生かされているし、便利な生活ができていることを忘れたくはないですね!
まゆりさん
わはは。TOMの興味の趣くままなので、よく見る植物が未だにアップされないままでいるのがナサケナイところです。リクエスト待ってまーす。
投稿: TOM | 2006年10月10日 (火) 11時02分