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2008年5月28日 (水)

サゴヤシ

Metroxylon sagu

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ヤシの仲間にサゴヤシという子がいます。シンガポール植物園では正門(タングリンゲート)を入って20mくらい進んだ左側の生垣沿い、他の植物の後ろに隠れるように植えられています。

ぱっと見た目はヤシっぽくないです。というか一本立ちするココナッツなんかとは明らかに違うタイプで、日本で売られているテーブルヤシなんかを巨大にした感じです。地際から葉っぱが直接出ていておまけに隣接して何本もごちゃごちゃに生えているという印象。

シンガポール植物園のは、今ひとつ写真が撮りにくくて、いい写真がなくてごめんなさい。ネットで検索してみました。こちらをごらんあれ

原産地の写真じゃないのが残念ですけど、なんとなくサゴヤシの樹形とか分かるんじゃないかなと思います。

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多分…だけど、根元から新しい株が出てきて横に増えて広がっていくんじゃないかな。ススキのように。

でもって新しい株は地際から葉っぱが出たような状態になっていて、株が大人になって充実したのが1本に立ち上がって、地面近くの葉っぱ群からポーンと飛び出たようになっているんでしょう。そんな感じが写真からはします。間違っていたらすみません。

ごらんのとおり綺麗な羽状葉。

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株が大人になってくると真ん中の幹がぐんぐんと地面から伸びてきます。そしてココヤシのような1本立ちのヤシの様相を呈します。

この幹は10~12mになるそうです。

この幹からでんぷん(澱粉)が採れる ので、サゴヤシは東南アジアの一部の人々にはとっても 大切な食料を得るための植物 となっています。

ヤシ科 Palmae

トウ亜科 トウ連 メトロクシロン亜連 サゴヤシ属

Calamoideae Calameae Metroxylinae Metroxylon

原産地:ニューギニア、モルッカ諸島、メラネシア(研究は進んでおらず、正確な原産地は解明されていないそう)

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サゴヤシを食用にしているのは、 ニューギニア島の低地、モルッカ諸島の一部、マレーシアサワラク州(ボルネオ島)の一部、シベルート島(スマトラ島の西のインド洋の島)の住民で今も食用とされているそう。

ウィキペディアには「東南アジアにおいてはイネの導入以前に主食の一端を占めていたと考えられている。」とあって、その食料としての歴史の長さを感じさせてくれます。文献として一番古いのはマルコ・ポーロの「東方見聞録」と言われているそうです。

朝日の「植物の世界」にはニューギニア、モルッカ諸島、メラネシアあたりが原産地と書いてあるけれど、ウィキペディアには「サゴヤシの植物学的な研究は発展途上であり、原産地は未だ解明されていない」。とありました。

つまりはバナナちゃんなんかと同じように栽培植物で昔々に食料として広がってしまったために本当の元々はどこにあったのか、よくわからないってことなんでしょうねぇ。よかったら下のページもお読みください。

人類最大の発明―栽培植物

バナナはどうやってバナナになったか?

で、サゴヤシちゃんからでんぷんを収穫する方法ですが…。朝日によれば…。

高さ10~12mになる幹を切り倒し、縦に割ったり皮を剥いで軟らかい髄の部分を槌でトントンと打って細かく砕き、水の中に流し込んでデンプンを分離する。そして水中に沈殿したデンプンを集めて固める。」

とあります。

木を切り倒しちゃうってことはココヤシのように何回も収穫することはできないんですね。

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いつ収穫するかというと、お花が咲く前。

サゴヤシの仲間は一生に一回だけ花をつけるんですって。12~15年かけて成長して大人になって、最後に木のてっぺんに巨大な花序(3.6~4.5m)を付けて、お花を咲かせ、実をならせて枯れてしまう んだそう。この人生(木生?)最後の大イベント「種をつける」という目的のために、サゴヤシちゃんは一生懸命10数年もかけてデンプンを幹に貯めるわけ。

それを人間が横取りするって寸法だな。(ああ、哀れなサゴヤシちゃん!)

左の写真は2002年にシンガポール植物園で撮ったもの。サゴヤシちゃんが花を咲かせて実をならした後に枯れちゃった株です。巨大な花序の残骸が分かるでしょ。このとき下に落ちていたのが下にある写真のでした。うぇ~!蛇の鱗みたい!こんなのが巨大な花序にたわわに実っていたの。なんか変。

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実をならせるからには、何かに食べてもらったりして中の種を運んでもらいたいのだとおもうのだけど、こんな表面がとっても固い実を、いったい誰が食べたのでしょう??

気になって資料で実に付いて調べたら、「中果皮はコルク状、またはスポンジ状で、内果皮は薄い。種子は1個あり、球状。胚乳は均質」とありました。

うーーん。よくわからない。美味しいのかどうか知りたいんだけど。ま、ココナッツだって食べる連中がいっぱいいるんだから、きっと食べる動物もいるんでしょうねぇ。

何はともあれ、サゴヤシ1本から、およそ100kgものデンプン質を採取することができるそう。あっぱれーーー!!!

できたサゴヤシのデンプンを固めて丸くしたものがサゴパール。元々はサゴのデンプンで作られていましたが、最近はタピオカ芋のデンプンで作ることも多く、一般的には、サゴパール=タピオカ みたいな受け取られ方をしています。

ウィキペディアには「タピオカパール:糊化させたタピオカを球状に加工し、乾燥させたものはタピオカパールと呼ばれ、煮戻してデザートや飲料、コンソメスープの憂き身などに用いられる。黒、白、カラフルなタイプと様々な色がある。本来はサゴヤシのでん粉で作られていたが、安価なタピオカに切り換えられている例が多い。

とありますので、サゴヤシちゃんのが本家本元!!!!なのよー!!

サゴヤシなんて知らないよーーって思った方が多いかと思うんですが、じつは結構身近なものだったでしょ!

TOMが大好きなシンガポールのデザート、ハニーデューサゴ。こんなんです。

http://i.allabout.co.jp/users/25/diary/show/15376

http://sporelife.exblog.jp/3179512/

どちらのにもタピオカ入りと書いてあるけれど、「なぜサゴ?」と思ったことないですか?…そういうわけだったのでしたぁ。

あと、特筆しておきたいのは、これ。ウィキペディアによると、「サゴヤシ(sago palm)とは、樹幹にデンプンを蓄積する植物一般を指す名詞である。ヤシ科に11属、ソテツ科に3属のサゴヤシが存在する。」なんて記述があります。要するに、サゴヤシと呼ぶ植物がいっぱいあってややこしいんだって。

そう言えば、TOMも昔こんなソテツの仲間を紹介したことがあったわ。→セイロンサゴ

でもソテツの実などから採れるデンプンには「人間を死に至らせる有毒な青酸配糖体が含まれているので危険である(朝日)」にあるので注意が必要だそう。

あと、今回調べていて知ったのは、

①食品アレルギーの方の代用食品としてサゴのデンプンが日本でも販売されていること。

http://www.tsuji-shop.jp/shop/6.html

http://recyclingnetwork.blog102.fc2.com/blog-entry-161.html

②バイオエネルギーの原料として注目されていること。

http://www.necfer.com

http://recyclingnetwork.blog102.fc2.com/blog-entry-161.html

の2点でした。

どちらもかなり興味深いです。お暇ならリンク先をじっくりお読みください!

その他の興味深かったページ

サクサクと呼ばれるサゴでんぷんを使った主食を食べた太平洋戦争中の日本軍の話

世界の3大デンプン源、トウモロコシ、ジャガイモ、コムギに次ぐ第4デンプン源としてサゴヤシが注目!

サゴヤシプランテーション視察

インドネシア紀行

この後、マレー半島で見たサゴヤシの畑はこちらに画像をアップしてあります。

資料:シンガポール植物園植物ガイド(ボタ本) P156

    朝日「植物の世界」 P11-109

    園芸植物大事典 小学館 P92

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2008年5月22日 (木)

ヒトリシズカ (日本)

Chloranthus japonicus

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ヒトリシズカとかフタリシズカとかの名前は知っていたものの、(多分、昔お花も見たことがあると思う)お花をちゃんと観察したことはなかったTOM。

だってね、昔は「地味な花~」ってな感じの価値観しか持ち合わせていなかったのよ。頭の中が園芸植物中心で。

でも熱帯で地味で小さなものに心を奪われてしまったせいで、今回の日本では細かいものにばかり目がいくようになってしまいました。

いや、単にわびさびがわかるお年頃になっただけかもしれませんが…。

森の中で出会ったヒトリシズカちゃん。撮影は2008年4月15日。ムラサキケマンちゃんが咲き乱れていたのと同じ場所です。

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可愛いじゃん…。

お花のような白い部分をてっぺんに載せて1本ずつ立ってる姿が一人って感じらしい。

別名にヨシノシズカ(吉野静)ってのがあるそうなんですが、資料によると「吉野の山に舞う静御前の姿に見立てたもの」と言われてこんな名前になっているんだって。

それはともかくもっとよく観察してみます。

あれれ?これはドクダミパターンね。

何かと言うと、お花みたいに見える部分は正確には1つのお花じゃなくて花序。たくさんのお花が軸の周りにくっついて、1つのお花みたいに見えてるってやつ。白い棒のようなものは実はオシベの花糸。葯は軸に近いところに付いているのが下の写真ではわかるでしょ。

ヒトリシズカって一人じゃなくて、いっぱいのお花の集まったものだったのね。

花びらとかガクがなくて、生殖のためのメシベ1個とオシベ2個でワンセットで、それがいっぱい。オシベの花糸は3mmくらい、写真を撮ったときはメシベがお年頃でした。葯はまだ開いているようには見えないので、メシベが先行するタイプなのかな?

花びらもガクもないお花「無花被花(むかひか)」と言います。その一種でした。

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センリョウ科 Chloranthaceae

分布:北、本、四、九

山地の林下や日のあたる草地にはえる多年草

Common name:ヒトリシズカ ヨシノシズカ

資料:「日本の野草」山と渓谷社 P557

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2008年5月21日 (水)

シュロ

Trachycarpus fortunei

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TOMが住んでいる埼玉県の所沢あたりで一番一般的なヤシと言えば、シュロ。ヤシマニアのTOMとしては日本のヤシの少なさには涙してるのだけど、最もポピュラーなシュロのお花が満開とあってはお花を求めて放浪せずにはおられません。ゴールデンウィークからこっち、シュロと見れば寄っていって写真を撮る日々が続きました。

ご存知とは思いますが、ヤシと言えば日本人がすぐに思い浮かべるココナッツあるいはココヤシの葉は鳥の羽のような形をしている羽状葉と呼ばれるタイプのもので、シュロは掌の形をしているので掌状葉と呼ばれるタイプの葉を持つ、れっきとしたヤシ

シュロ属の説明には「高地が原産のためか、ヤシ科の中では一番耐寒性が強く、-15℃で屋外で越冬する」と資料には書いてあって、ちょっとびっくり。そんなわけでシュロやこの仲間のトウジュロが日本では一般的になっているんでしょう。

先日出かけたイタリアでも、南のローマではカナリーヤシがいっぱい見られたのに、北に行くとほとんど見なくなってシュロの仲間だろうと思われるヤシが一般的に見られました。

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ゴールデンウィークの少し前、4月の後半から見られたのはこんなおかしなお花の赤ちゃんの塊。まだホウに包まれていて、うーーん、カワイイ。

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花序はあれよあれよと成長し、なんだか気味の悪い塊がにょきっと出てきます。

気がつかないでおられる方が多いのですけど、下の写真のような感じでお花がたわわに5月上旬は咲き乱れる姿がそこここで見られました。

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どれがお花?って思うでしょ?(TOMのブログを見てる人は「もういいよ」って感じかもしれませんが)

なので、アップ。

咲き始めと大分咲き進んできた頃の2つの写真。

シュロ属は雌雄異株なのでこれは雄株の雄花の群です。すごい、いっぱいですねぇ。13

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お花が落ちていたのでアップで写真を撮りました。

1つの花は直径で5mmくらい。小さな花がひしめき合って1つの大きな花序を作っています。

シンガポールではヤシの花が咲いていれば小さな甲虫がブンブン飛んでいるのですぐにわかります。でも日本では甲虫がブンブンという場面には会いませんでした。

日本の書籍を見ると「ヤシは風媒花」と記しているものが多くて不思議に思っていましたが、なるほど、こんなにも虫が周囲に飛んでいなければ風媒花と思うのも無理もありません。シュロは風媒花なのかもしれないし、もしかしたら原産地とは遠く離れてしまった埼玉県には花粉を運ぶ甲虫はいなくなってしまったのかもしれません。

残念なことに、雌株にはとうとう出会えませんでした。冬に実がなっている様子は何回か目にしたので、雌株はあるはずなのですが、TOMのお散歩コースにはたまたまなかったのかしら?

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なんてことを考えていたら、今日、出会いました。でも残念。もう実の赤ちゃんになっていました。雌花には結局出会えず。来年を待ちます。ぐっすん。

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今年の1月に出会った実。青黒い色で、花序の軸がオレンジ。なんとも綺麗でした。

左の写真を見ると掌状葉の先が折れ曲がっています。これがシュロの特徴。

シュロの近縁でトウジュロTrachycarpus wagnerianus)というのがあります。トウジュロとシュロは良く似ているのですが、トウジュロの方が葉っぱが硬い感じしかも小葉が短く、葉の先が折れていないのがトウジュロなのだそうです。10

何枚か下の写真はトウジュロかなと思うのですが。どうでしょう?資料には「シュロとトウジュロの雑種と考えられるものがある」とあったので、見分けはますます難しくTOMが悩む固体が多かったです。

ヤシ科 Palmae

タリポットヤシ亜科 タリポットヤシ連 トリナクス亜連 シュロ属

Coryphoideae Corypheae Trinacinae Trachycarpus

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原産地:中国南部 南九州とする説もあるが確認されていないそう

Common name:ワジュロ、棕櫚、棕梠、椶櫚

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左の株は、葉が比較的小さく、固そうに見えて、葉の先が折れていないので、トウジュロかな?と思いますが、どうでしょう?

町の中でシュロと見ると観察していますが、葉っぱが若いうちはトウジュロのような顔をしていて、育ってくると葉が大きくなって垂れ下がってる感じのものも多いので、なんともいえません。

とにもかくにも町の中に混在しているので、近い種であれば自然にかけ合わさってシュロとトウジュロをお父さん、お母さんに持つ子がいても何の不思議もない気がします。

ちなみに20年以上も前に大学の実習で自然教育園で説明を受けたときには、シュロは本来は関東の森の中にはなかったものだが、鳥が実を食べて糞で森の中に落とすので、自然教育園の中にも自然発生的に増えて困っているということを聞きました。20年も前の話です。町の中でも「あえて植えたのではなく、出てきちゃったんでしょー?」って感じの株にも良く出会います。

葉っぱは下のようなの。ハスツラがよく発達しています。

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シュロの葉鞘の繊維はこんな風に幹にくっついて残ります。これを使ってロープ(シュロ縄)やその他色々なものを作ります。

熱帯のヤシはこんなものをつけたままにしないでツルツルのものが多かったので、寒さに強いヤシとしてあらためて見てみると、防寒の為にくっつけたままでいるのかしら?などと思えてきて面白かったです。だれかこの繊維を取っちゃったのと、取らないでそのまま放置するのとどっちが寒さに強いか…なんてことを研究している人がいないかしら?

資料;園芸植物大事典 小学館 P97

    朝日植物の世界 P11-104

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2008年5月16日 (金)

虫たちの季節限定レストラン

気合の入らない日々が続いております。やるべきことはいっぱいあるのになぁーー。

リビングの前の庭のエゴノキが満開です。

それはそれは綺麗。美しいーーーー!!

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先だって3月なみの寒い日が数日続き、昨日は久しぶりの快晴。(お天気がよかったので自転車で西武ドームのバラとガーデニングショーに出かけました。)

久しぶりのお天気に虫たちは狂喜乱舞。

庭に出ると、虫たちの羽のブーーーンという音に包まれます。

気持ちがいいから窓を開けたいけれど、開けたが最後、虫たちがお部屋の中に迷い込んでしまうので、おちおち窓も開けていられません。

しかたがないからガラス越しのお花見です。ふと思い立ってご近所のお友達とほんの30分のお花見タイム。贅沢な時間。こんな短い時間の間にもガラスに激突する虫ちゃんがいっぱい。おいおい。気をつけて。

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夫の喫煙場所はこのリビング外のデッキ。自然と虫ウォッチングが夫の休日の日課に組み込まれました。

クマンバチをはじめアブの仲間などなどがいっぱいやってきて、蜜や花粉を一生懸命集めています。

花粉団子はあっと言う間に出来上がっていくとか。

「器用だねぇー」と感心することしきりの夫。

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蜂がいっぱいやってくると「刺すから危ない」と言う人もいるかも。でも住宅街の一角に1本しかないエゴノキ目掛けて懸命に働く虫ちゃんたち、いとおしく思えてなりません。こんな小さな自然でも大きな自然の中の小さな部分を担うことができるのが嬉しいなあと思います。

ま、どうせね。

お花が咲いている間だけだもん。

もう少ししたら来なくなるよね。だから、今はガラス越しの花&虫ウォッチングです。

そろそろ気合を入れないとなぁ。写真がますますとんでもないことになっとります…。シュロの雌花を求めてさまよう最近のTOMなのであった。見つからない…。

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