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2008年5月21日 (水)

シュロ

Trachycarpus fortunei

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TOMが住んでいる埼玉県の所沢あたりで一番一般的なヤシと言えば、シュロ。ヤシマニアのTOMとしては日本のヤシの少なさには涙してるのだけど、最もポピュラーなシュロのお花が満開とあってはお花を求めて放浪せずにはおられません。ゴールデンウィークからこっち、シュロと見れば寄っていって写真を撮る日々が続きました。

ご存知とは思いますが、ヤシと言えば日本人がすぐに思い浮かべるココナッツあるいはココヤシの葉は鳥の羽のような形をしている羽状葉と呼ばれるタイプのもので、シュロは掌の形をしているので掌状葉と呼ばれるタイプの葉を持つ、れっきとしたヤシ

シュロ属の説明には「高地が原産のためか、ヤシ科の中では一番耐寒性が強く、-15℃で屋外で越冬する」と資料には書いてあって、ちょっとびっくり。そんなわけでシュロやこの仲間のトウジュロが日本では一般的になっているんでしょう。

先日出かけたイタリアでも、南のローマではカナリーヤシがいっぱい見られたのに、北に行くとほとんど見なくなってシュロの仲間だろうと思われるヤシが一般的に見られました。

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ゴールデンウィークの少し前、4月の後半から見られたのはこんなおかしなお花の赤ちゃんの塊。まだホウに包まれていて、うーーん、カワイイ。

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花序はあれよあれよと成長し、なんだか気味の悪い塊がにょきっと出てきます。

気がつかないでおられる方が多いのですけど、下の写真のような感じでお花がたわわに5月上旬は咲き乱れる姿がそこここで見られました。

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どれがお花?って思うでしょ?(TOMのブログを見てる人は「もういいよ」って感じかもしれませんが)

なので、アップ。

咲き始めと大分咲き進んできた頃の2つの写真。

シュロ属は雌雄異株なのでこれは雄株の雄花の群です。すごい、いっぱいですねぇ。13

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お花が落ちていたのでアップで写真を撮りました。

1つの花は直径で5mmくらい。小さな花がひしめき合って1つの大きな花序を作っています。

シンガポールではヤシの花が咲いていれば小さな甲虫がブンブン飛んでいるのですぐにわかります。でも日本では甲虫がブンブンという場面には会いませんでした。

日本の書籍を見ると「ヤシは風媒花」と記しているものが多くて不思議に思っていましたが、なるほど、こんなにも虫が周囲に飛んでいなければ風媒花と思うのも無理もありません。シュロは風媒花なのかもしれないし、もしかしたら原産地とは遠く離れてしまった埼玉県には花粉を運ぶ甲虫はいなくなってしまったのかもしれません。

残念なことに、雌株にはとうとう出会えませんでした。冬に実がなっている様子は何回か目にしたので、雌株はあるはずなのですが、TOMのお散歩コースにはたまたまなかったのかしら?

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なんてことを考えていたら、今日、出会いました。でも残念。もう実の赤ちゃんになっていました。雌花には結局出会えず。来年を待ちます。ぐっすん。

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今年の1月に出会った実。青黒い色で、花序の軸がオレンジ。なんとも綺麗でした。

左の写真を見ると掌状葉の先が折れ曲がっています。これがシュロの特徴。

シュロの近縁でトウジュロTrachycarpus wagnerianus)というのがあります。トウジュロとシュロは良く似ているのですが、トウジュロの方が葉っぱが硬い感じしかも小葉が短く、葉の先が折れていないのがトウジュロなのだそうです。10

何枚か下の写真はトウジュロかなと思うのですが。どうでしょう?資料には「シュロとトウジュロの雑種と考えられるものがある」とあったので、見分けはますます難しくTOMが悩む固体が多かったです。

ヤシ科 Palmae

タリポットヤシ亜科 タリポットヤシ連 トリナクス亜連 シュロ属

Coryphoideae Corypheae Trinacinae Trachycarpus

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原産地:中国南部 南九州とする説もあるが確認されていないそう

Common name:ワジュロ、棕櫚、棕梠、椶櫚

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左の株は、葉が比較的小さく、固そうに見えて、葉の先が折れていないので、トウジュロかな?と思いますが、どうでしょう?

町の中でシュロと見ると観察していますが、葉っぱが若いうちはトウジュロのような顔をしていて、育ってくると葉が大きくなって垂れ下がってる感じのものも多いので、なんともいえません。

とにもかくにも町の中に混在しているので、近い種であれば自然にかけ合わさってシュロとトウジュロをお父さん、お母さんに持つ子がいても何の不思議もない気がします。

ちなみに20年以上も前に大学の実習で自然教育園で説明を受けたときには、シュロは本来は関東の森の中にはなかったものだが、鳥が実を食べて糞で森の中に落とすので、自然教育園の中にも自然発生的に増えて困っているということを聞きました。20年も前の話です。町の中でも「あえて植えたのではなく、出てきちゃったんでしょー?」って感じの株にも良く出会います。

葉っぱは下のようなの。ハスツラがよく発達しています。

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シュロの葉鞘の繊維はこんな風に幹にくっついて残ります。これを使ってロープ(シュロ縄)やその他色々なものを作ります。

熱帯のヤシはこんなものをつけたままにしないでツルツルのものが多かったので、寒さに強いヤシとしてあらためて見てみると、防寒の為にくっつけたままでいるのかしら?などと思えてきて面白かったです。だれかこの繊維を取っちゃったのと、取らないでそのまま放置するのとどっちが寒さに強いか…なんてことを研究している人がいないかしら?

資料;園芸植物大事典 小学館 P97

    朝日植物の世界 P11-104

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コメント

ヤシ好きのTOMさんらしい記事ですね~。
来年は、是非雌花チャンの写真を撮ってブログに載せてくださいね。待ってます。
ところで、シュロは本来は関東地方になくて、鳥が運んだ実が自然発生して増えちゃった・・・ていう下り、面白~い!きっと、とっても美味しい実なのね!

投稿: keiko | 2008年5月24日 (土) 09時34分

keikoさん
コメントありがとう!また一緒に森を歩こうねぇ。所沢でまってるよーー!


投稿: TOM | 2008年5月27日 (火) 08時54分

子供のとき家のそばのシュロをヤシだと思い込み学校で、うちにヤシがあるんだよ、と言ったと言ったら母に思い切り怒られた記憶があります。「あれはヤシじゃない、シュロだ」と。
でもヤシの仲間だったんですね。良かった。実家の母に言っておきます。

投稿: arai | 2008年5月27日 (火) 22時20分

araiさん
コメントありがとう!
きっとお母さまにとっては「ヤシ=ココナッツ」だったんでしょうね。そしてシュロはシュロで椰子ではない…と。TOMも昔はシュロとソテツの区別がイマイチついていませんでした。今は勉強したおかげでわかりまーす!

投稿: TOM | 2008年5月28日 (水) 06時01分

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