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2008年6月 5日 (木)

カポックツリー

Ceiba pentandra

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(miyomamaさんがお花の写真を送ってくださったので、以前書いた記事の修正版で再アップしました)

シンガポール植物園のバンドスタンドとレインフォレストエリアの間に、カポックの木はあります。

板根がとても大きくて、それはそれは見事。子どもだったらすっぽり入ってしまうくらい。これで樹齢が100年足らずだと植物園の人は言っていたのにはビックリ。   

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大きな木なので2006年の年末にお花がいっぱい咲いて落ちているのは見られたんだけど、花序の様子などがよくわからないままになっていました。

先日miyomamaさんが「ホルタム・ホール近くのカポックは
枝が低く出ていて、目の前にお花が見えました。(2007・4・21)よかったら使ってください。
」なーんて素敵な写真を送ってくださったので、以前紹介したページをリニューアルしての紹介です。

花序の様子。まとまって枝にくっついてるんですねー。なんだかすごい数!下の3枚の写真はmiyomamaさんが提供してくれました!

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こちらは運良くそのままの形で落ちていたお花。7_32

普通ね。日本のサクラとかだったら、お花が咲いててきれい!って思うでしょ。でも、カポックの場合は木が大きいから、お花の咲いている枝が遠くて、普通は花が咲いているのがよく見えない(涙!) 

だから木の下に落ちていた花殻で、「ああ、花が咲いているんだなあー」って気付かされるんです。 

木の下はこんな風景。花殻の量が多くて、2006年にTOMがお花に出会ったときは、靴の底がベタベタになってしまいました。                                    

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落ちていた花殻はほとんどがこんな感じ。12_12

中にはこんなつぼみも…。ガクはカップ状になっています。

花が

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終わると長さが10~15cmくらいのラグビーボールのような実がなります。熟すと割れて中から白い綿毛が出てきます。

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左の写真もmiyomamaさんが昔提供してくれた写真。タネが整然と綿の中に並んでいる様子がよくわかりますよね。

下の写真は木の上で、ふわふわの綿毛が飛び出してきているところ。

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綿毛が飛ぶようになると、まるでボタン雪が降っているかのような風景を見る事ができます。

拾ってみたら、1つの綿毛の塊の中に、黒い種が1つずつくるまれていました。なるほどー。こうやってタネを飛ばすのがカポックちゃんの戦術なのねー。

このワタ。パンヤとして使われたり、水をはじく性質を持っているので、救命胴衣などに使われたりしているそうです。

自然友の会の友人たちにはこれを拾い集めて色々作っている人たちもいましたよ。子供と一緒に拾い集めてマスコットなんかを作るのも、シンガポールの思い出作りの1つとしては素敵なんじゃないかな。

綿を作ってくれる植物は綿花だけじゃなくて色々あるって事をカポックはTOMに教えてくれました。ほんとに植物は面白い!!

下に落ちている綿にはこんな虫がよくいます。

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若い時の幹にはこんな棘があるのも特徴のひとつ。5_57

葉っぱはこんなふう。

シンガポール植物園のバンドスタンドのカポックの板根はとにかく記念写真スポットには最高!

ぜひ一度は撮って、シンガポールの記念にしてくださいね!

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キワタ科 Bombacaceae

原産地:熱帯アメリカ、熱帯西アフリカ

Common name: Cotton Tree , Kapok Tree , White Silk Cotton Tree ,カポック、 シロキワタ

資料:「Tropical Trees And Shurubs」Wee Yeow Chin P337

「熱帯植物要覧」 P298

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2008年6月 4日 (水)

シナモン

Cinnamomum verum または C.zeylanicum

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子供の頃大好きだったマンガに「7つのエルドラド」っていうのがあって、その中でいつも料理に使っているコショウが、1580年当時の西欧諸国で途方もない価値を当時持っていた事を知って、ものすごく驚いたことがありました。

30年前のTOMにとってはスパイスと言えば、全部ぐちゃぐちゃ。シナモンもコショウもチョウジもみんな同じ感じだったのですが、あるときシナモンは「世界最古のスパイスと言われエジプトのミイラ作りに使われていた」ということを知って、「コショウの歴史よりもはるかにさかのぼるシナモンっていったい何?」という素朴な疑問はずっと持っていました。

話はちょっとずれるようですが、エジプトのミイラはいったいいつ頃作られ始めたのでしょう?

エジプトでミイラづくりが実際に行われはじめたのは、古王国時代第4王朝、技術的に完成したのは新王国時代です。」(やっぴさんの「楽しい世界史」より)

とありました。古王国台王朝は紀元前2613年から2494年ごろとあって、紀元前ってことは…「今から4500年くらいも前ーーー!?」

古い、古すぎる…。バナナに匹敵する古さ…?

果たしてTOMたち自然友の会のメンバーが「シナモンと呼んでいるあの子」がセイロン島から、エジプトのミイラに使われるために4500年も前に商品としてはるばる運ばれていたのか?ま、確かに運べない距離じゃなかろうけど。(ちなみに「シナモンは消費地エジプトには産しない」と資料にはある。乾燥した国のエジプトではクスノキやシナモンの仲間は育たないのかもしれない…)

知れば知るほど沸いてくる素朴な疑問。(誰か助けて…と思っていたら…)

朝日の「植物の世界」P14-152にはこんな記述があって、「ああ、やっぱり…、朝日さま…ありがとう!」って「植物の世界」に合掌したTOMなのでした(笑)

「西アジアで用いられていたカッシアシナモンソマリランドに産した植物で現在知られているものとはまったく異なったものであるらしい(クスノキ科のラウェンサラ・アロマティカ Ravensara aromatica ではないかという説もある)。

「後にインド産のシナモン(おそらくクスノキ科のタマラニッケイ Cinnamomum tamala)にかわり、ソマリランドのカッシアやシナモンは歴史上から消えてしまった。

「インド南部に産する現在のシナモン(セイロンニッケイ)Cinnamomum verum の登場は山田憲太郎氏によれば14世紀になってからだという。

「そして、アラビア商人が東南アジアに現れるようになると、別種のシナモンあるいはカッシアを発見した。

「スマトラ島産のキンナモムム・ブルマンニ C.burmanni や、ベトナム産のキンナモムム・カッシア C. cassia などがそれであり、いずれもカッシアの名で西方に運ばれることになる。」

つーまーりー。

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4500年も前にミイラに使われていたシナモンは、今のシナモンとは別物のアフリカ産の似たもの…らしい。

商人たちの行動範囲が広がるにしたがって、シナモンやカッシアが採れる新しい木が見つかって、昔のものに取って代わったっちゅうわけだな。

でもって、シナモンやカッシアと呼ばれる商品は、似たようないくつかの植物から作られて、どれがどれなのかどうも混乱している…らしい。(本でもインターネットでも。調べるほどに出てくる違う記述…おーーーい!って叫びたくなったよー!!!)

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朝日の「植物の世界」P14-160で、吉田よし子氏は「シナモンはクスノキ科クスノキ属のいくつかの種の植物からとられ、市販されている粉シナモンは、カッシアを原料とする場合が多い。米国でシナモンと言えば、カッシアのことである。」「最も高貴な香りのシナモンがとれる」のがセイロンニッケイと説明していました。

なるほど。シナモンの中でも特別にいい香り だから、今はセイロンニッケイ=本家本物シナモンみたいな感じになっているんだね。

この辺を整理してくれてる素敵なページを発見。お、インド料理屋さんの方のページのよう。ふむふむ横浜かー。なかなか納得できるカレーに日本で出会えないTOM。今度行ってみよう。(横浜方面は友達多いし)

話はずれましたが、このページ読んでみてください。混迷の度合い が知れて嬉しくなるくらいよん。残念ながらウィキペディアも今回は混乱の中にいらっしゃいました。

http://www.ganesh.gr.jp/cinnamomum.html

このカレー屋さんのページにある「H氏のスパイス図鑑」はすごい!読み応えがあります。こちらもごらんあれーー。

あと、こっちのページも面白かった。八つ橋に使われているのはニッキ?ってなページです。

長すぎる前置きとなりましたが、特別によい香りのシナモン、セイロンニッケイちゃんが今日のお題。(ようやくたどり着いた…汗!)

木はね、あんまり大きくないです。ていうか、TOMがシンガポールで見たのは5mかそこらの大きさ。原産地ではどうなんだろう?10mくらいにはなると書いてあるけど。

下のは葉っぱの写真。新しい葉っぱが赤いです。クスノキと同じように縦に3本のしっかりとした葉脈が通っているのが大きな特徴。

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でもシンガポールでは罠があって、シンガポールの森の中や街路樹でとってもよく見かけるワイルドシナモンも縦に3本の葉脈なの。

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左がワイルドシナモン。右がシナモン。

違いが分かる?

3本の葉脈が分かれ始める部分が葉柄からすぐの部分か、とりあえず1本で行って3本に分かれるかの違い。

でもこれも個体差が結構あって、見分けにくいです。徹底的なのはワイルドシナモンはあんまり香りが強くないこと。(でも時々強いのもあるのよ…)

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最初の写真が花序も写っているけれど、よいお花の写真はTOMは撮れませんでした。

でも同じクスノキ属とあってクスノキワイルドシナモンとよく似ています。

これはフォートカニングパークのスパイスガーデンで撮ったものなんだけど、このときはお花は終わっちゃって実がなりかけって状態だったのよね。

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面白いのはガクの部分が残って、その中から実がだんだんと出てくる様子。

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ね、こんな風になるの。

いつかもっとよい状態のお花とかに出会いたいなあ…。

クスノキ科 Lauraceae

分布:スリランカ

Common name: セイロンニッケイ、シナモン

資料:朝日「植物の世界」P9-76 P14-152

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2008年6月 2日 (月)

クスノキ(日本)

Cinnamomum camphora

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5月中旬頃からしばらくクスノキのお花が咲いていました。

日本に前にいたときは、クスノキの花なんて興味がなくて、今回見たら「あれれ?」。

ワイルドシナモンのお花そっくりだー!!

…そう言えばご親戚だった…。

シナモンをまとめようとしていた矢先だったので、「丁度いいや」とクスノキちゃんを先にアップして、交通整理です。

というのは、TOMの中で「ニッキ(肉桂)と言われる、子どもの頃に食べたお菓子の中に入っている香料」と「シナモン」はどんな関係にあるのかが、ハッキリしていなかったから。

あと、クスノキから作られていたと言う樟脳についても。

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じつはクスノキちゃんを含むクスノキ属は Cinnamomum と言います 。要するにスパイスのシナモンの仲間達で、この仲間は香りがよくて色々に使われているらしいんです。

で、クスノキちゃんからは樟脳が採れるので昔から植えられてきました。

樟脳は根や幹、枝葉を蒸留して採取します。英語で「カンファーcamphor」、医薬上は「カンフル」。古代エジプト、ギリシャの時代から薬用、宗教上の儀式に用いられ、現代でも殺虫剤、医薬材料、工業原料として昭和30年代までは生産されていたが、今は合成樟脳にとってかわられているとのこと。

なるほどなるほど。やっぱ、クスノキちゃんから作っていたのね。雨が降った後なんかにクスノキちゃんの近くに行くと、樟脳っぽい香りがすごいものねぇ。

樟脳はクスノキを蒸留して作るけれど、シナモンは樹皮を丸めて作るんだね…。

下はクスノキの葉っぱ。縦に3本の葉脈が通っていて、シナモンに良く似ています。

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あと、シナモンとニッケイとケイヒの違いってなんかあるのかしら?

そもそも違うものなの?

朝日の「植物の世界」に書いてあったのは、こんな感じ。

C.sieboldii  ニッケイ(肉桂)、シナニッケイ:根の皮に特有の芳香を持った辛味と甘味があり、芳香性健胃剤や菓子の材料にする。(中国南部、インドシナ半島原産)

C.verum または C.zeylanicum.  セイロンニッケイ:いわゆるシナモンを樹皮から作る。

C.cassia ケイヒ(桂皮)、カシア樹皮を桂皮と言って、薬用やシナモンの代用とする。(インドシナ半島原産)

C.japonicum ヤブニッケイ:日本の森にある木。ニッケイに葉などがよく似ているが、葉の香気は乏しい。

ほぉーー。そもそも木から違ったのね。長年の疑問がすっきりして嬉しいです。そもそもインド産のシナモンの代用品としてケイヒもニッケイも使われたってことなのかな??それが日本ではお菓子とか薬に使われてきたのかな?

話が横道にずれてしまいました。詳しくはシナモンの回で。

クスノキちゃんに戻ります。現代では街路樹や公園、神社仏閣などでよく見られるクスノキちゃんですが、自然の状態では関東以西のカシ類、シイ類などの照葉樹と混じりあって生えています。まれに純林状になることもあるそうです。

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ワイルドシナモンのお花そっくりなクスノキのお花はこれ。お花だけアップで見せられたら、TOMはクスノキかワイルドシナモンか見分けがつきませーん。

1つの花は直径5mmにも満たない両性花でした。かわいいーー!

クスノキ科 Lauraceae

分布:日本の関東地方以西、韓国済州島、台湾、中国南部、インドシナ半島…しかし、古くから栽培されてきたので自生の範囲ははっきりしていない

資料:朝日「植物の世界」P9-74

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