秋明菊 考-3
Anemone hupehensis var.hupehensis
シュウメイギクが属するキンポウゲ科の仲間は、お花を咲かせる植物の中で「形態に原始性をとどめながらも、高度に進化したグループ」なんだそう。
お花や色々な部分にその証明が残っていて、そんな目でお花を観察してみるのも楽しいです。
まず花びら。
下の写真の花びらのように見える部分。花びらじゃありません。ガクが変化したもので、花びらはないんです。その証拠に裏返してみると、ガクがありません。
見てみてね。
じゃ、つぼみの時からどんな風に、花は成長して行くのでしょう?
順を追っていきます。
まずつぼみらしい蕾。
次に蕾の外側の本来ならガクになる部分が色づいてきます。花びらのような部分が大きく成長してきます。
ある程度大きくなると開いてきます。でも花全体の大きさは まだ小さい です。
右と左の指の大きさを同じくらいにしてみました。花びらみたいな部分が成長しているのがわかるよね。
花が開き始めてから花全体の大きさが変化して行くってのはイランイランなんかを思い出させてくれます。
イランイランはバンレイシ科。ガクも花びらもよくわからんって感じもよく似ていますね。やはり古いタイプのお花です。こういうふうに考えると面白いね。
真ん中の丸い部分のアップ。
この部分がメシベがたくさん集まった部分です。普通は子房があって、そこからメシベがにょきっと出てて…というのが私たちが小学校で習ったメシベのイメージ。でもこのまん丸の塊はそのイメージとはどうも違います。
でもメシベの塊なのです。多分表面のボツボツひとつひとつがメシベ。まだ花が若いので、メシベがまだ成熟していません。
というのもキンポウゲ科はオシベ先熟(オシベがまず成熟して花粉を出し、それが終わってからメシベが成熟して受粉し、同じ固体の中での受粉を避ける習性)なので。
まずはオシベが成熟して花粉を出します。
このとき虫が遊びにきていますが、アネモネの仲間は蜜を出さないので、虫は花粉目当てで来ているんだそう。
で、このあたりも面白いポイント。
昔々、虫が花に寄ってきたのは、はじめは花粉が目当てだったんだそう。
花粉は次世代のための遺伝情報のほかにたんぱく質なども豊富に含んでいるので、虫にとってはとてもよい栄養源だったんだって。で、最初は一方的に虫が花粉を搾取する関係だったのが、植物も虫を利用すると風で花粉を飛ばすよりもより確実に仲間に花粉を運んでもらえると気づいて、積極的に虫を花粉を運ぶ媒体として利用するようになった。
だけど、花粉は植物が次世代のためにエネルギーを振り絞って作り出すもの。それより効率がいい(植物にとってはエネルギーが少なくてすむ)発明品が「蜜」だった…という話がある。
ということは蜜を作らず、花粉を与えて花粉を運んでもらう習性も古い性質かしら??
花粉がだいぶ出て花びらみたいなガクが触るとはらはら散ってしまうようになると、真ん中の丸い部分はこんなふうになってきます。
キンポウゲ科は一般的にはメシベやオシベがいっぱいあるんだけど、これらは螺旋状についているんだって。この写真からわかるかな?
で、この螺旋状につく…という形態は「マツボックリのボコボコが螺旋状についている」なんて裸子植物にも通じる形態で古い形態を残しているのだそう。
丸いメシベの塊から出発した、TOMのシュウメイギクのなぞを追う旅は、とうとう裸子植物にまでさかのぼってしまいました。面白いなあーーー。
丸い部分をさらにアップします。突起が出てきてふわふわした感じになっているところ、これはメシベが成熟して花粉の到着を待っているところなのかしら??
花びらみたいなガクとオシベが全部落ちてしまうとこんなボコボコした丸い塊が残ります。
この状態だと受粉は終わっているのかな?よくわかりません。
で、受粉した子房がそれぞれ大きくなって、丸い集合果が出来上がるらしいのだけど、これはこれから観察してどんなふうになるのか見たいと思います。
本には長い毛を持つ種子がついて、風で飛ばされるとありました。
http://wapichan.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_ecf0.html
属名のアネモネはギリシャ語で「風」を意味するのですが、こんなタネの様子から属名がついたのではないかと言われているそうです。
シュウメイギクですが、イチリンソウ属(Anemone)に属しています。
イチリンソウ属は約150種。世界中に分布
しています。日本のシュウメイギクの元の姿と思われるAnemone hupehensis var.hupehensis はヒマラヤ地方より中国大陸、台湾の温帯より暖帯に分布しているのですが、その地域はキンポウゲ科の分化の中心なのだそうで、「そこに残っているキブネギク(シュウメイギク)の仲間はやはり古い植物ということができよう。」と「生きている古代植物」には書いてありました。
また、イチリンソウ属の植物は花びらがなくて、花びらのように見えるのはガク。シュウメイギクも同じですが、「花びらがない」ということも古いタイプということの証明なんですって。
シュウメイギクは茎が枝分かれしてたくさんの花をつけますが、そんなところも古い性質を残していると考えられているんだそうです。
うーーーん。難しい。でも面白い。
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その他にも調べていたら興味深い記事がありました。でもTOMには簡単に説明するのが難しいので、一読してわからない方はごめんね、TOMの記憶用に書いてると思って読み飛ばしてください。
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シュウメイギクの属するイチリンソウ属(Anemone)は閉果で、その意味ではキンポウゲ科の中では進化した群。どういうことかと言うと、キンポウゲ科の中で古いタイプのものは袋果(トリカブトとか)になるので。
でもその一方で原始的な特徴も残していて、たとえばニリンソウはその中でも面白い特徴をもっています。
ニリンソウは閉果だけど、閉果が秋にできたときには、タネの中で受精した受精卵がまだ分裂しないままでいることが多く、閉果として落ちてから ゆっくり胚が発生するんだって。でもこれって裸子植物の中でも古いタイプのソテツやイチョウといった、精子があって受粉を行う植物群の特徴。被子植物としてはどんなにか原始的な部分をのこしているかということがわかります。
おおーーー!面白い。
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まとめ
シュウメイギクAnemone hupehensis var. japonica は本来は八重で古い時代に日本に入ってきたタイプを指す。
最近出回っている一重のタイプはAnemone hupehensis var.hupehensis で、ヒマラヤ地方より中国大陸、台湾の温帯より暖帯に分布し、キンポウゲ科の中でも古い形質を残した興味深いお花である。
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ちゃんちゃん♪長いお付き合い、ありがとさん。
資料:「生きている古代植物」P60
朝日「植物の世界」P8-262
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