カテゴリー「Bf:熱帯植物事典(シダ類) Ferns」の記事

2007年2月12日 (月)

シンガポールのシダ

Tectaria singaporeana

学名にシンガポールの名前のついたものは幾つかありますが、この子もその1つ。公園や街中では見る事ができなくて、ブキティマやマクリッチの一部でのみ見られます。

個体数はけっこう多い感じで、一回覚えれば森の中で出会ったとき、すぐにこの子だとわかります。

TOMはシンガポールシダとか勝手に名前を付けて呼んでいたんだけど、実際はモニターリザードファーンという名前がついていました。これはマレー名の英訳のようです。モニターリザードっていうのはシンガポールで見られるオオトカゲの一種。森の中では頻繁に見かけます。モニターリザードはこの子。見てみてね。どうしてオオトカゲシダ(大蜥蜴シダ)(TOMが勝手に和訳)なんて名前が付いているのか不明ですけど、マレーの人に聞いてみたいですねぇ。

写真が不十分で申し訳ないのだけど、ちょっと調べないといけなかったので、とりあえずアップ。写真を見つけたら、またアップしますね。

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Dryopteridaceae (資料1) or Aspidiaceae (資料2)

原産地: シンガポール、マレーシア

Common name: Paku Biawak , Monitor Lizard Fern ,モニターリザードファーン

資料-3にはこんなふうな説明があります。例によって超意訳。

「森の中で、それも林冠の下でだけ育ち、森の狭い小道に沿って普通に見られるのが、このシダ。ローカルネームはPaku Biawakでオオトカゲのシダという意味です。このシダは一見、シダのようには見えません。すっと伸びた葉の茎に先の尖った1枚の葉っぱがついているので、私たちがよくシダと思っている普通のシダとはちょっと趣が違うのです。でもちょっと近づいて葉っぱの裏側に胞子嚢がいっぱい着いているのを見れば、この子が確かにシダだということがわかります。胞子のついていない葉は、輪生のように輪に広がります。真ん中に立ち上がっている長い葉柄の付いた細長い葉っぱは、胞子が付いた葉っぱです。」

TOMが見たときは、全部の葉っぱに胞子がベタベタと付いているように見えていたけど、胞子の付く葉と、付かない葉っぱがあるのか…。今週、マクリッチのローニートレイルに行くので、確かめて写真を撮ってきます。

科は資料によって違っていて、本当はどっちが正しいのか今のところ不明。これもそのうち確かめます。

資料-2には、葉っぱを post-natal tonic に使うって書いてありました。これって出産後の強壮剤ってこと?わかる方教えて! それ以外には熱が出た時に治療に使うと書いてありました。

原産地は、マレーシアのシダについて調べてある資料-2には、「低地の森または丘の湿った暗い場所でけっこうよく見られるシダ」とあったので、マレー半島とかサバ・サワラク州の同様の環境の場所ではよく見られるものなんでしょうね。発見されたのがシンガポールだったので、こんな学名が付いたんでしょうか?

資料-1:「1001 Garden Plants in Singapore 2nd Edition」 P96

資料-2:「FERNS of Malaysia in colour」A.G.Piggott  P345

資料-3:「S Guide to the Ferns of Singapore 」Singapore Science Centre P53-54

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2006年11月19日 (日)

オオタニワタリのご親戚

Asplenium nidus

シンガポールで…いやマレーシアとかでも、ちょっと湿気がある場所の木にボコボコとついているのがこのシダ。バーズネストファーンって言います。「鳥の巣のシダ」って意味。本当にその通りでしょ。

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大きさはかなり大きくて、直径2mを超えそうなものもいっぱい。こんなにいっぱい木にくっついていて、木は重たくないのかしら?って思っちゃいます。

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くっついてはいるけれど、この木に寄生しているわけではなくて、ただ場所をお借りして暮らしているだけなので、こういう子たちを「着生植物」って言います。熱帯雨林は下部は日があたらないので、他の背が高い木の途中に住まいを借りて、少しでもお日様の光をいただこう…というのがこういうタイプの子達の戦略なんだそうです。(同様の戦略を取っている子が絞め殺しの木の仲間たちです。こちらも合わせて見てくださいね

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寄生しているわけではないので自給自足をしないといけません。どうやって自給自足をしているかと言うと、上から落ちてくる葉を大きな鳥の巣のような体で受け止めて、そこで腐葉土にして栄養にしたり、自分の枯れた葉っぱも絶対に落とさないでいつまでもぶら下げていて、最後は栄養に戻してしまう…という工夫をしています。(あっぱれーーーー!!!)お水も雨を待ったり、自給自足。すごい!

日本のガーデニングって「枯れた葉を見ると取り除きなさい」ってすぐに言うけど、いらぬ親切心。枯れた葉もついたままにしてあげましょうね。

1_70本来は木の上に暮らす子たちですが、シンガポールでは地面に植えられてグランドカバーの一つとして使われていることもよくあります。

日本でオオタニワタリって言われている子たちや観葉植物やテーブル観葉として使われている子達とはどう違うんだろうと思っていたので、資料をよく読んでみました。

オオタニワタリ日本の南部や台湾に分布する子達(Asplenium antiquum) で、「常緑性で、根茎は塊状となり、葉は単葉で短い葉柄をつけ放射状に広がる。胞子嚢群は葉の裏面の葉脈について、主脈から葉脈へ2/3より外側まで伸びる。また主脈は基部の1/3が黒紫色で、上部は緑色となる。主に山地の樹木や岩の上に着生して生育する。」と資料にありました。

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対して、日本ではシマオオタニワタリと呼ばれるバーズネストファーンちゃんは「アジアから太平洋諸島にかけて分布し、姿はオオタニワタリと似ているが、胞子嚢群は主脈から葉脈の1/2までとなる。また主脈の1/2まで黒紫色となる。」

確かに写真で見ると半分くらいまでしか胞子嚢群の茶色は見えないですね。

オオタニワタリとバーズネストファーンちゃん、何が違うのかと思っていましたが、よくわかりました。うーーん、はっきり言ってTOMにとってはどうでもいいやーってな違いですぅ!

チャセンシダ科は世界に広く分布しているけど、特に熱帯地域に多くて、10属700種くらいもあるそう。そのほとんどがチャセンシダ科に属している。地上に生育するが、樹木や岩に着生するものもある…と資料にはありました。 下の写真は胞子嚢群のアップ。胞子嚢の形も色々あって面白いんだよー!

チャセンシダ科 Aspleniaceae

原産地: 熱帯アフリカ、熱帯アジア、太平洋

Common name: Bird's Nest Fern , バーズネストファーン、シマオオタニワタリ

資料: 「1001 Garden Plants in Singapore」 P37 

「観葉植物」山と渓谷社 P590

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2006年7月23日 (日)

古代植物 マツバラン

Psilotum nudum

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マツバラン科 Psilotaceae

原産地:世界の熱帯・亜熱帯に広く分布 日本では暖帯に分布

Common name: マツバラン、ホウキラン、Whisk Fern

シンガポール植物園の進化園(Evolution Garden,エボリュションガーデン)のお勉強をしていて知ったのが「マツバラン」。いや正確にはマツバラン(松葉蘭)の名前と植物そのものは知っていました。でも「ランというからにはランの仲間なんだろうか」なーんてボケなすなイメージを持ったままの曖昧な植物の1つだったのでした。今回、マツバランについて頭の中がクリアーになったのが収獲の1つかなぁって思うのでUP!!

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大きく育って高さは30smくらい。写真のように茎が2つに2つに分かれていくのが特徴です。(二股分岐といいます)

葉の先の部分の写真。2つに分かれていくのがわかります。

マツバランはランではありません。それどころか被子植物でも種子植物でもなく、シダ植物の一番古いところに位置する植物。シーラカンスとかを「生きている化石」と言うでしょ。マツバランは地上の植物の「生きている化石」の筆頭株らしいです。つまり地上に最初に上がった植物が、一番原始的な姿のまま何億年も生き続けてきたような格好の植物なんだそう。

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そんなわけで厳密な意味では根も葉もまだ存在しない植物なんだそうです。地上茎を見るとこんな小さな突起があって、これが葉かな?って思うんだけど、実際は葉と呼べるような構造を持っていないんだって。茎の表面に見える白い斑点は「気孔」なんだって。

古い地上の植物なので、種子ではなく、胞子で増えます。下の写真の茎にくっついている小さな丸い粒々が胞子の入っている袋です(胞子嚢2_2

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胞子嚢の拡大写真。実際は2mmくらいしかないすごく小さなものです。上の写真の茎の突起の付け根に1個ずつ付いています。最初は緑色ですが、熟すると黄色になり、最後には先っちょが裂けて胞子を飛ばすんだそうです。緑の茎にいっぱい黄色の粒々が付いた姿はけっこうかわいらしく見えます。

胞子嚢は3つに分かれていて、中には白い粉が入っていました。これが胞子なんでしょうね。粉はサラサラでした。 8 9

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根元からはこんな芽(?)が出ていました。

マツバランは大体は着生植物なのだそうで、木の幹にくっついたり、岩にくっついたりして暮らしているそうです。まれに地上に生えることもある…と本には書いてありますが、多分、地上で普通の状態だと他の植物との競争に負けてしまうので、そういったほかの植物があまりいない場所を選んで生き残ってきたのでしょう。

マツバラン科は1属2種しかない科で、植物学者に言わせると「たいへん風変わりな印象を与える植物」なのだそう。(TOMにはただの植物に見えるが…)

そのわけは「全生活史を通して根がない」から。「小型の水生植物のように、特殊な環境に適応して根が二次的に退化した例は知られているが、もともと根がないと思われる植物はほかにはない。」のだそうだ。

でも実際には、地下茎みたいなのがあって、毛のような根っこがいっぱいついてる。でもこれは「根毛状の毛である仮根」であって根ではなく、地下茎も「根の先端をおおう保護組織である根冠を持たないので、根といえない」と資料には書いてあった。よくわからんが、根とか茎とか葉と呼ぶには、植物学的にはある決まりがあって、マツバランの根や葉に見えるものは違う と言いたいわけだな…。資料には畳み掛けるように「地下茎の表面につく仮根は毛であって、決して根ではない。」とまで書いてありました。ハイハイ、わかりました。

こんな熱帯植物のブログで取り上げましたが、マツバランは日本人には馴染み深い植物のひとつです。気がつかないだけで、関東以南に住んでいる日本人はどこかで見かけたことがあるんじゃないかなと思います。花屋で購入した鉢植えの下に生えていたり、そんなのをTOMは日本で見ていました。

江戸時代に「金のなる木」と呼ばれていた、高値で売買されて投機対象となっていた植物達があります。具体的にはタチバナ、オモト、フクジュソウ、セッコク、ソテツなどの植物達でした。この中に含まれていたのが、「マツバラン」です。江戸後期1836年に出版された「松葉蘭譜」には奇妙キテレツなマツバランが90種ほど紹介されています。下記の資料にはその絵が載っていて、これに大金を払う江戸の粋な人たちの気持ちがわからず、TOMは大笑いをしましたよ。

もっと詳しい説明が見たい人はコチラをどうぞ。

資料:朝日新聞社 植物の世界 P12-93

   「江戸のガーデニング」 青木 宏一郎 平凡社 P66

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2006年3月31日 (金)

うさちゃんの足のシダ

Davallia denticulata

Davalliaceae (シダ植物…ごめんそのうち調べます)

原産地:熱帯アジア、ポリネシア

Common name: Rabbit's Foot Fern, ラビットフットファーン

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シンガポール植物園のビジターセンターにパームコートと呼ばれる小さな広場があります。そこにはアブラヤシが整然と植えられているのですが、そのヤシの幹に着生しているのが、このかわいい名前にシダ、ラビットフットファーンちゃん。今回のタイトルの通り、「うさぎの足のシダ」という意味です。

そのわけは…上のの写真を見るとわかるでしょ?かわいいーねー!

シダの葉の根元の部分ていうのかな?とにかく植物の一部がこんな形をしておりますです。

資料: 「1001 Garden Plants in Singapore 」P38

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2005年12月11日 (日)

蛇の舌のシダ

Ophioglossum pendulum

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ハナヤスリ科 Pphioglossaceae ( シダ植物 )

原産地:?…たぶんシンガポールあたりかな?

Common Name: Adder's Tongue Fern, コブラン

コモンネームは学名の属名から付いたらしいです。ギリシャ語で「ophis」は蛇のこと、「glossa」は舌のことだそうです。

細長い葉の先が「蛇の舌」のように2つに分かれていて、長いものでは1mにもなるそうです。

写真は2年以上前ブキバトネイチャーパークの入り口付近で撮ったもので、先日行ったときには跡形もなくなっていました。残念。一緒に映っている人と比べても長さがわかるでしょ。圧巻でした。見られなくなってしまって本当に残念。

ほとんどの場合、スタグスホーンファーンにくっついています。上の方に見られる形の違う葉のシダがスタグスホーンファーンです。

アダーズタンファーンはスタグスホーンファーンのバスケットに胞子が入り、3~4年してから成長をはじめるとか。このバスケットの中の暗い場所で、ある種の菌と共生して、菌の力を借りて、バスケット内の枯葉から養分をもらっているのだそうです

大きくなってバスケットの外に出てくると、日光を受けて緑色になり、光合成をはじめ、ようやく菌の力を借りずにひとり立ちできるようになります。

何年か前まではたくさん見られた…と2年以上前に、「自然友の会」の先輩が作ってくれた資料にはありました。道路の拡張工事のために古い木がたくさん切られてしまって一緒にアダーズタンファーンもなくなってしまったりとか、このシダが木にダメージを与えるとか、蚊が発生するとかいう誤解のために、取り去られてしまったために、今はあまり見られなくなってしまったとのことでした。そんな中、ブキバトのこの写真のシダはとても立派だったので、いつの間にか姿を消してしまっていたことをあらためて知って、とても残念でした。

資料:「自然友の会」定例会資料 by KK先輩 より

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