Metroxylon sagu
ヤシの仲間にサゴヤシという子がいます。シンガポール植物園では正門(タングリンゲート)を入って20mくらい進んだ左側の生垣沿い、他の植物の後ろに隠れるように植えられています。
ぱっと見た目はヤシっぽくないです。というか一本立ちするココナッツなんかとは明らかに違うタイプで、日本で売られているテーブルヤシなんかを巨大にした感じです。地際から葉っぱが直接出ていておまけに隣接して何本もごちゃごちゃに生えているという印象。
シンガポール植物園のは、今ひとつ写真が撮りにくくて、いい写真がなくてごめんなさい。ネットで検索してみました。こちらをごらんあれ
原産地の写真じゃないのが残念ですけど、なんとなくサゴヤシの樹形とか分かるんじゃないかなと思います。
多分…だけど、根元から新しい株が出てきて横に増えて広がっていくんじゃないかな。ススキのように。
でもって新しい株は地際から葉っぱが出たような状態になっていて、株が大人になって充実したのが1本に立ち上がって、地面近くの葉っぱ群からポーンと飛び出たようになっているんでしょう。そんな感じが写真からはします。間違っていたらすみません。
ごらんのとおり綺麗な羽状葉。
株が大人になってくると真ん中の幹がぐんぐんと地面から伸びてきます。そしてココヤシのような1本立ちのヤシの様相を呈します。
この幹は10~12mになるそうです。
この幹からでんぷん(澱粉)が採れる ので、サゴヤシは東南アジアの一部の人々にはとっても 大切な食料を得るための植物 となっています。
ヤシ科 Palmae
トウ亜科 トウ連 メトロクシロン亜連 サゴヤシ属
Calamoideae Calameae Metroxylinae Metroxylon
原産地:ニューギニア、モルッカ諸島、メラネシア(研究は進んでおらず、正確な原産地は解明されていないそう)
サゴヤシを食用にしているのは、 ニューギニア島の低地、モルッカ諸島の一部、マレーシアサワラク州(ボルネオ島)の一部、シベルート島(スマトラ島の西のインド洋の島)の住民で今も食用とされているそう。
ウィキペディアには「東南アジアにおいてはイネの導入以前に主食の一端を占めていたと考えられている。」とあって、その食料としての歴史の長さを感じさせてくれます。文献として一番古いのはマルコ・ポーロの「東方見聞録」と言われているそうです。
朝日の「植物の世界」にはニューギニア、モルッカ諸島、メラネシアあたりが原産地と書いてあるけれど、ウィキペディアには「サゴヤシの植物学的な研究は発展途上であり、原産地は未だ解明されていない」。とありました。
つまりはバナナちゃんなんかと同じように栽培植物で昔々に食料として広がってしまったために本当の元々はどこにあったのか、よくわからないってことなんでしょうねぇ。よかったら下のページもお読みください。
人類最大の発明―栽培植物
バナナはどうやってバナナになったか?
で、サゴヤシちゃんからでんぷんを収穫する方法ですが…。朝日によれば…。
「高さ10~12mになる幹を切り倒し、縦に割ったり皮を剥いで軟らかい髄の部分を槌でトントンと打って細かく砕き、水の中に流し込んでデンプンを分離する。そして水中に沈殿したデンプンを集めて固める。」
とあります。
木を切り倒しちゃうってことはココヤシのように何回も収穫することはできないんですね。
いつ収穫するかというと、お花が咲く前。
サゴヤシの仲間は一生に一回だけ花をつけるんですって。12~15年かけて成長して大人になって、最後に木のてっぺんに巨大な花序(3.6~4.5m)を付けて、お花を咲かせ、実をならせて枯れてしまう んだそう。この人生(木生?)最後の大イベント「種をつける」という目的のために、サゴヤシちゃんは一生懸命10数年もかけてデンプンを幹に貯めるわけ。
それを人間が横取りするって寸法だな。(ああ、哀れなサゴヤシちゃん!)
左の写真は2002年にシンガポール植物園で撮ったもの。サゴヤシちゃんが花を咲かせて実をならした後に枯れちゃった株です。巨大な花序の残骸が分かるでしょ。このとき下に落ちていたのが下にある写真の実でした。うぇ~!蛇の鱗みたい!こんなのが巨大な花序にたわわに実っていたの。なんか変。
実をならせるからには、何かに食べてもらったりして中の種を運んでもらいたいのだとおもうのだけど、こんな表面がとっても固い実を、いったい誰が食べたのでしょう??
気になって資料で実に付いて調べたら、「中果皮はコルク状、またはスポンジ状で、内果皮は薄い。種子は1個あり、球状。胚乳は均質」とありました。
うーーん。よくわからない。美味しいのかどうか知りたいんだけど。ま、ココナッツだって食べる連中がいっぱいいるんだから、きっと食べる動物もいるんでしょうねぇ。
何はともあれ、サゴヤシ1本から、およそ100kgものデンプン質を採取することができるそう。あっぱれーーー!!!
できたサゴヤシのデンプンを固めて丸くしたものがサゴパール。元々はサゴのデンプンで作られていましたが、最近はタピオカ芋のデンプンで作ることも多く、一般的には、サゴパール=タピオカ みたいな受け取られ方をしています。
ウィキペディアには「タピオカパール:糊化させたタピオカを球状に加工し、乾燥させたものはタピオカパールと呼ばれ、煮戻してデザートや飲料、コンソメスープの憂き身などに用いられる。黒、白、カラフルなタイプと様々な色がある。本来はサゴヤシのでん粉で作られていたが、安価なタピオカに切り換えられている例が多い。」
とありますので、サゴヤシちゃんのが本家本元!!!!なのよー!!
サゴヤシなんて知らないよーーって思った方が多いかと思うんですが、じつは結構身近なものだったでしょ!
TOMが大好きなシンガポールのデザート、ハニーデューサゴ。こんなんです。
http://i.allabout.co.jp/users/25/diary/show/15376
http://sporelife.exblog.jp/3179512/
どちらのにもタピオカ入りと書いてあるけれど、「なぜサゴ?」と思ったことないですか?…そういうわけだったのでしたぁ。
あと、特筆しておきたいのは、これ。ウィキペディアによると、「サゴヤシ(sago palm)とは、樹幹にデンプンを蓄積する植物一般を指す名詞である。ヤシ科に11属、ソテツ科に3属のサゴヤシが存在する。」なんて記述があります。要するに、サゴヤシと呼ぶ植物がいっぱいあってややこしいんだって。
そう言えば、TOMも昔こんなソテツの仲間を紹介したことがあったわ。→セイロンサゴ
でもソテツの実などから採れるデンプンには「人間を死に至らせる有毒な青酸配糖体が含まれているので危険である(朝日)」にあるので注意が必要だそう。
あと、今回調べていて知ったのは、
①食品アレルギーの方の代用食品としてサゴのデンプンが日本でも販売されていること。
http://www.tsuji-shop.jp/shop/6.html
http://recyclingnetwork.blog102.fc2.com/blog-entry-161.html
②バイオエネルギーの原料として注目されていること。
http://www.necfer.com
http://recyclingnetwork.blog102.fc2.com/blog-entry-161.html
の2点でした。
どちらもかなり興味深いです。お暇ならリンク先をじっくりお読みください!
その他の興味深かったページ
サクサクと呼ばれるサゴでんぷんを使った主食を食べた太平洋戦争中の日本軍の話
世界の3大デンプン源、トウモロコシ、ジャガイモ、コムギに次ぐ第4デンプン源としてサゴヤシが注目!
サゴヤシプランテーション視察
インドネシア紀行
この後、マレー半島で見たサゴヤシの畑はこちらに画像をアップしてあります。
資料:シンガポール植物園植物ガイド(ボタ本) P156
朝日「植物の世界」 P11-109
園芸植物大事典 小学館 P92
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熱帯植物図鑑 (目次…時々更新中)
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