カテゴリー「Ag:シンガポールの自然の概要」の記事

2006年10月19日 (木)

シンガポールの落葉の季節

mさんからこんな質問メールをいただきました。

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熱帯、特にシンガポールには落葉の季節はあるのでしょうか。

7月の終わりに日本から旅行で来星した方を案内していたら、その方が「こちらにも落葉があるのねー。」と言われたのです。確かに黄色く色づいた葉がたくさん落ちていました。
落葉は冬への準備というイメージがあって、年中夏のこの国とは結びつかず、深く考えた事がありませんでした。種類によるのかもしれませんが、気をつけて見ていると、茶色く枯れた葉が落ちている木も。…後略

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2_54うーーーん。TOMが見ている限りでは。
落葉の季節…。シンガポールでは明確にはないように感じます。
それぞれの木ごとに、てんでんばらばら、落葉の季節を迎えているように見えます。

TOMなりにこうじゃないかな?と思ってるものはあったんだけど、考えれば考えるほど「じゃあ、この場合は?」とかこんがらがってしまったので、いつもお世話になっている先生に聞いてみました。

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①結論を言うと、シンガポールが原産の木で「一度に落葉する性質を持っている」木はあまりないそうです。

②でもタイなどに行けば乾季・雨季がはっきりしているので、乾季に一度に落葉する性質を持っている木がたくさんあります

③あと、南アメリカのタベブイアなどは雨季乾季がはっきりした場所ではなくても、落葉してから花をつけたりする そうです。葉が無いほうが花粉を運んでくれる虫の目に付きやすくて有利だからではないかとお話されていました。

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後はTOMの補足です。おかしなところがあったらご指摘ください。

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葉は…、熱帯でも落ちます。
日本の常緑樹のクスノキとかでも、いっぺんに葉っぱが落ちることはないけど、葉っぱの寿命が来ると、ぱらぱらと落ちていたでしょ。私達の髪の毛とかも寿命が来ると抜けちゃうよね。おんなじです。

mさんが見たのは多分「いっせいに葉っぱが落ちて、いっせいに葉っぱが出て来るタイプの木」。日本の落葉樹のようですよね。寒くなんかならないのにどうしてシンガポールでいっせいに葉っぱを落とす必要があるの?って思うのは当然だと思います。

1_50先生のお話だと、「シンガポール原産の木ではそういった性質を持つものはあまりない」ということなので、シンガポールで葉っぱをいっせいに落としている木は、どうもシンガポールではなくて、別の地域原産の木が多いようです。一番上の写真はシーフィグというイチジクの仲間ですが、時々こんなふうにいっせいに葉を落として、きれいな若葉をいっせいに出しています。とてもきれいです。

シーフィグの原産地は「1001 Garden Plants in Singapore」P371では「日本、中国、インドシナ、マレシア、熱帯オーストラリア」となっていて「シンガポールも原産地の1つなのに落葉するよ。どうして?」と思っていましたが、先生のお話だと「分布範囲が広いから…」というニュアンス。TOMは、「シーフィグなんかの場合は、今は赤道をはさんで両熱帯・亜熱帯にひろく分布しているけど、本来は赤道直下でないところで進化してきたものだから、シンガポールでも落葉する性質を持つんじゃないかな」と思うんですが、どう思う??

さて。根本に話を戻します。植物が葉っぱをいっせいに落とすのは何故なんでしょう?

寒かったり雨が少なかったりで、葉っぱを付けてても得るものよりもロスのほうが大きいと「面倒臭い…、えーい、休んじゃえー!」てな具合で、葉っぱを落としちゃうように進化した植物達…これが一般的な落葉樹。大きな原因は「温度と水」です。

同じ熱帯地域でも、北回帰線や南回帰線に近いほうに行くと、季節風の影響を受けて、雨季と乾季がはっきりと分かれる地域(シンガポールの乾季雨季と違って乾季にはほとんど雨が降らない)があって、このあたりには乾季に落葉する植物がいっぱいあります
日本の冬から春への変化と同じように、乾季は葉っぱを落として休息を取り、雨季に向けて花を咲かせ葉っぱを出し実を結ぶタイプの植物熱帯にもあるわけ。

シンガポールは赤道直下で、乾季と言ってもまったく雨が降らないわけではなく、植物が葉っぱを落とす必要はありません。でもシンガポールにはそんな熱帯季節林(雨季と乾季がある森)で進化してきた植物がたくさん導入されていて、その子たちが故郷での習慣を忘れられず、葉っぱをてんでんばらばらの季節に落としているんではないかなとTOMは予想しています。

シンガポールの街中で見られる植物のじつに8割が外来種なんだそうです。東南アジアだけでなくて、アメリカやアフリカの熱帯地域からとってもたくさんの植物がやってきています。とーってもグローバル!

ガーデンシティを作るために世界中の熱帯・亜熱帯から植物を導入し、うまく育ったものの中から、ガーデンシティの構築に役に立ちそうな樹種を積極的に植樹した結果なんだって。緑陰を作るもの、きれいな花を咲かせるものなどが初期には積極的に植えられました。

その結果が「てんでんばらばらに落葉しているように見える樹木たち」なんじゃないかなぁ。どうでしょう?

でも先生のお話の③によると、落葉樹はそれだけではなかったんですね。花粉を運んでくれる虫や鳥の目に付きやすいように、あえて葉を落とすものもある ってことをはじめてTOMは知りました。

下の写真はシンガポールでのタベブイア。この写真では葉がいっぱい付いていますが、確かに5月頃花がたくさん咲く頃のタベブイアは、葉がたくさん落ちてしまってつるっぱげ状態に近いものもたくさん見られます。

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それぞれの樹木が葉を落とす原因は、樹木たちの原産地での暮らし方を見ればたぶん一目瞭然なんだろうな。でも私達は世界各地を旅行して歩くわけにはいきません。今、目の前の樹木たちの様子を見て、どうして?なぜ?って思いながら、原産地での暮らし方を想像するのも楽しいなあってTOMは思います。

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2006年5月29日 (月)

イチジク

熱帯植物を語るのに絶対に欠かすことができないのがイチジク。

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イチジク? 食べるアレですかーー??

って思うでしょ。そうです。あのイチジクのお仲間が熱帯ではとーっても重要な植物なんです。

ベンジャミンが生まれ故郷の熱帯ではすっごーーーーく大きい木でビックリしたという話を先日紹介したんですが、ベンジャミンもイチジクの仲間。そのほかにもイチジクの仲間はいっぱいあって、クワ科イチジク属には700種もの仲間がいるそうです。

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日本でお馴染みなのは、ベンジャミン ( Ficus benjamina )をはじめ、食べる「イチジク ( Ficus carica ) 」、「ゴムノキ ( Ficus elastica ) 」と呼ばれている観葉植物、紀伊半島や四国南部で見られる「アコウ( Ficus superba var. japonica ) 」や沖縄を連想させる「ガジュマル  ( Ficus microcarpa ) 」なんかもみーんなイチジクの仲間。ついでに言うなら「オオイタビカズラ」の名でも知られていて、ガーデニングの寄せ植え材料としてよく使われる「フィカスプミラ ( Ficus pumila ) 」もフィカスの文字通り、イチジクの仲間です。

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皆さんが知っているだけでもけっこういっぱいあるってわかったでしょ?

漢字で「無花果」と書いて「イチジク」と読むのはご存知だと思いますが、(TOMは知らなかった…)イチジクは私達が想像するようなきれいなお花は咲かせません。だから「無花果」。でも実はなる…。いったいどこにお花が咲いているんでしょ?

不思議に思ったことはありませんか?

じつは実みたいに見えるモノのにびっしりいているのがイチジクのお花の1つ1つ。写真は落ちたものなので、もうタネになっているものもあるのでしょうが、ちょっと前までここにお花がさいていました。…って言えばわかるかな? イチジクっていうのはたくさんのお花が集まって咲いている「お花のまとまり」でもあったんです。こういうタイプのお花のことを「イチジク状花」とか「(いんとうか)」と言います。

こういうタイプのお花と実をつける仲間がクワ科のイチジク属でいーーーーぱいあるわけ。

熱帯植物を語るのに欠かせない…と最初に書いたんですが、イチジクはとっても面白い特徴をいくつか持っています。1つは「幹生花・幹生果」と呼ばれる花や実をつけること。「絞め殺し植物」と呼ばれる性質を持つ仲間がいること。「イチジクコバチ」との共進化。これらは1つ1つの説明が長くなってしまうので、今日はすっごく大切なことだけお伝えします。

イチジクがないと、森の動物達は生き残っていけないんですぅーーー!!!

シンガポール周辺の東南アジアの森の動物(昆虫、鳥、哺乳類ージャコウネコやサル、リス、クマなど)たちは、イチジクを餌にしていて、餌のほとんどがイチジクってこともあるそうです。オランウータンの食べる果物の4分の1がイチジクということもあるそう。

熱帯の植物達は気まぐれなので、温帯の植物たちのように、1年に1度決まった季節に花を咲かせ、実をみのらせません。木によっては数年に1度、10年に1度、数十年に1度しか実を結ばないものもあります。そういった気まぐれな植物達の実を待っていては、森の動物達は飢え死にしてしまいます。彼らを食いつながせてやっているのが、「イチジク」たち。イチジクは色々な種類のものがいつも森のどこかで実をみのらせ、動物達が食べて、種を遠くまで運んでくれるのを待っています。

でもシンガポールは都会だからイチジクなんてあんまりないんでしょ? って思う?

いえいえ、バスに乗っている時も、公園を散歩している時も、森の中を歩いている時も、歩けばすぐにイチジクにあたります。

子ども達は動物が大好き!いえいえ大人もですよね。ガイドをしているときも動物が出てきたら、説明は取りやめ。みんなが満足するまでゆっくりと動物を観察します。そんな動物達の命をささえてくれているのがイチジクちゃんたち。感謝、感謝!!

下の写真は「コモンレッドスティムフィグ ( Ficus variegata )」。こんな風に幹にボコボコ直接実をつけます。日本では遭遇したことがない代物で最初はびーっくり。でも面白いでしょ?!!

これからイチジクちゃん、どんどんご紹介していきますね!

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資料:「熱帯多雨林の植物誌」P32~

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2006年5月 8日 (月)

シンガポールの自然の概要-1

Rimg0009sシンガポールは本来、熱帯雨林が生い茂っていたはずなのですが、今その姿が見られるのは島のごくごく一部にわずかに残された保護区でのみです。

その代りに政府主導で徹底した土地改革が行われ、「グリーン&クリーン」な都市のイメージを作り上げるべく、世界各地からあらゆる植物が導入され、政府の指導の元に植えられてきました。町中で見られる植物の実に8割が外来植物とのこと。このブログで取り上げている植物はみんなシンガポールの中で見た植物なんだけど、原産地がじつにバラバラだということに皆さんもすでにお気づきですよね!

今から200年くらい前の報告によると、この狭いシンガポールで当時観察された花の咲く植物は、約2000種類もあったとのこと。でも、開港してからの急速な全土の開発で多くの森の植物が消えていきました。2000種のうち約1割の約200種類はランで、その多くがマ ングローブの中の着生種でした。乾燥した環境に弱い着生ランは、森の開発と共にいち早く姿を消し、今自然で見られるランは地生種のランを中心としたほんの数種にとどまっています

残念!いったいどんな種類のランがあったんだろうねえ。タイムスリップしてみたいよー。(続く)

写真はシンガポール植物園のバンドスタンドと近くに植えられている国花「バンダ・ミスジョアキム」。ここでは1861年にはバンド演奏が行われて、イギリス人の紳士淑女の社交の場となっていたそうです。

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2006年1月 3日 (火)

熱帯雨林の概要-2

皆さんもよーく知ってることですけど、マングローブ林も含む熱帯雨林は、今急速に世界から姿を消しています。どのくらいのスピードで消えてるか知ってる?ある本によると、「あ」って私たちが声を出してるほんの瞬間、1秒ごとに、サッカーコート1面分の熱帯雨林が、色々な原因で消えているんだって。怖いね。いっぱいだね。石油などの化石燃料を二酸化炭素として放出する一方で、森林を減らし続けているので、地球大気の中の二酸化炭素は増える一方。うわー、大変!大変!

インドネシアでは焼畑のために山に火を放ちます。その灰がシンガポールに到着し、日本の花粉症のような症状で(ヘイズと呼ばれている…)たくさんの人が病院にどっと押し寄せます。ヘイズの影で、たくさんの熱帯雨林が失われているんだって知ったときには、日本では感じたことがなかった、背筋が寒くなる恐怖みたいなのを感じました。

(でもね。もともとの山の民と言われる人々は再生可能な範囲で焼畑をしていたんだって。今、無計画に焼畑が行われているのは人口問題で山の民でない人たちが山に流れ込んでいるせいなんですって。彼らはどう焼畑をすれば、再生可能なのか先祖から受け継いだ技術も何もなく、焼畑をしているので、そこのところが実は一番問題なんだって本には書いてありました。だから焼畑が無条件にいけないわけじゃないんだって。)

先にも書いたように熱帯雨林の土壌はとても薄いので、いったん上を覆っていた森を取り払ってしまうと、一度に多量に降る雨(スコール)によってあっと言う間に土壌が流され、回復不可能な土地になってしまいます

土地を放棄しないまでも油ヤシやゴムのプランテーションのような一品種のみの栽培は、土地を荒廃させていきます。行けども行けども油ヤシの山また山。そんな風景を、マレーシアに行けば、誰でも見ることができます。(ボルネオで熱帯雨林の保護のお仕事している人のレポートを読みました。こっちも読んでみて下さい。)

森が雲を呼び、雨を降らせ、水を貯め、適度に地上に放出する働きは、世界のどの森も持っている機能で、水と森は切っても切れない関係にあります。沿岸の海の豊かな魚貝の資源ももとはと言えば、森が生み出した有機物が川の流れで運ばれ、沿岸に注ぎ込むことから生まれます。(魚付き林って言葉を知っていますか?日本でも漁業の町で森を作る運動が盛んになってきていますが、熱帯雨林やマングローブ林でもこの機能が注目されています。)森を無くなること、そういった森以外の自然の資源を無くすことにもつながっています。

また、熱帯雨林は違った意味でも資源の宝の山です。

昆虫などと共生関係を作る一方で、簡単に食べられないように植物は様々な毒の成分を体に持っています。熱帯雨林の植物はほとんどすべてがそういった成分を持っており、山菜のようにそのままでは食べられない一方で、薬などとして森に住む人々に利用されてきました。未知の素晴らしい効用を持った成分が森の中に眠っており、しかもこの分野の研究はまだ進んでいないのです。癌やエイズなどの特効薬も熱帯雨林の中から見つかる可能性があると言われています。熱帯雨林を荒廃させることは、これらの宝の山が発見されることのないまま、ただ失われることになり、世界中の研究者が危惧しています。

薬とかだと、遠い話のようだけど、じつは意外なほどたくさんの熱帯の植物が日本の私たちの生活と関係しているということも、熱帯植物について調べれば調べるほど、出てきてビックリするんですよ。(バニラ、ラワン、籐、ココナッツミルク、植物性油…e.t.c.…。)

熱帯雨林が無くなることによって出て来る問題は個人ではどうにもできないのだけど、たくさんの人がこういったことにまずは興味を持ってくれたら、もしかしたら、次のアクションもあるかもしれないよね。そんな思いもあって、熱帯植物だよりを書いています。あらら。年始の決意みたいなのになってしまったわ。

それでは、今年もよろしくお願いします!

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2006年1月 2日 (月)

熱帯雨林の概要-1

forest-sJPG 熱帯雨林と言うと、ものすごく広大な面積があるというイメージがありますが、実際には「1年中暑くて湿気がたくさん!」という森は赤道の近くのほんのわずかの地域にしかないんだそうです。

種類は地域によって3タイプアメリカ、アフリカ、東南アジア。同じ熱帯雨林でもこの3種類は姿も、構成する植物の種類も違います。

熱帯雨林の典型的な形。とにかく「垂直方向に長い!!」

最も背の高い熱帯雨林はボルネオ島の低地あたりで、70~80メートル。雨がたくさんきちんと定期的に降って、おまけに十分な光を受けることができるので、思いきり成長できること、赤道付近では台風がなく、縦に伸びても風でなぎ倒されるようなことがないからです。(高さは場所によって、地盤や栄養分の多少によって変わってくるそうです。)

縦方向に長いので、森の上部と下部では様子が全然違っています。これは「階層構造」と呼ばれ、あらゆる生物が住む高層アパートのようなものになっています。

また、「熱帯の土壌はやせて」います。一見豊かに見えるのにどうしてなんでしょう?答えは暑いから。

気温が25℃以上になると微生物の活動が活発すぎて、植物が生産した有機物はあっと言う間に分解され、腐食として地表に留まりません。日本のような温帯は温度がちょうどよいので、腐食が適度に堆積して、雑木林のふかふかの地面ができるんだよね。シンガポールあたりは一番涼しい1月でさえ、平均気温が25℃。5月に至っては27℃。腐葉土になったと思ったら、すぐに次の段階の「ただの土」になってしまいますぅ!!

ただの土の中にある養分は、熱帯特有の強い雨と共にすぐに流れ去ってしまい、栄養分がとどまらないわけ。だから熱帯の土壌の厚さは30㎝程度。薄い!!!アメリカ、アフリカに至っては15㎝しかないんだって。(でも実際は植物達があの手この手で、雨に運び去られるより先に、もう一度吸収してしまうんだそう。)

ちょっと解説

日本で畑に野菜を植えるとき、鉢植えにお花を植えるとき、必ず腐葉土や牛糞などの腐食質の土壌改良剤を入れますよね。植物は腐食質の中に住む微生物の助けを借りて肥料分を上手に利用したり、根っこをのびのびと伸ばしたりできるのです。微生物は肥料分を適度に分解、また植物が吸収しやすい形に変えて、植物に供給してくれます。だから腐食質がないと、一般的には、植物は健康に育つことが難しいのです。腐食質を含んだ土が厳密には「土壌」であって含んでいない土はただの岩石のかけらにすぎません。

一方で、もともと腐食質がほとんどない場所で進化したり、適応したものもあります。これらは別の形で微生物や菌類の助けを借りて生活しています。日本の石灰岩の山に生えるアカマツなどもその一例です。

熱帯雨林の、ほかの温帯などとは比べ物にならないほど多くの多種多様な生物たちは、このような「高層アパート」と「やせた土壌」…というとっても不利な環境をどうにかしようと試行錯誤した結果、生まれました。

高層アパートの、各層ごとで違う光や水の条件をどうクリアして自分の種を残すか、生物は工夫をして、競争して、形を変え、種を増やしていきました。

また、土地がやせているため、生物達は土壌養分だけに頼ることができません。生物どうしでそれらを依存しあったりする特殊な関係を進化の中で作りあげていきました。

その関係は熱帯雨林が誕生してからの1億年近い年月をかけて、植物どうしだけでなく、微生物、昆虫、鳥類、爬虫類、哺乳類をも巻き込んだ、壮大なネットワークを作り出してきました。すごーい!!

熱帯雨林特有の植物の形はそんな中から、必然性があって生み出されてきたもの。

「絞め殺し植物」「アリ植物」「着生植物」「気根」「異形根」「幹生果」「幹生花」といった熱帯雨林に特徴的な植物の形はそんな中から生まれました。

シンガポールでは、外来の植物が多いとは言え、世界各地の熱帯雨林から植物を導入しているため、こういった特徴がある植物を、植物園だけででなく、街のあちこちで見ることができて、町中が熱帯植物園のよう。ちょっとでも知識があって、バスに乗れば、行く先々で色々なものを発見できますよ。上記の特徴についてはまたおいおいに…。今日はこれまで!

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2005年12月31日 (土)

熱帯の森の種類

熱帯の森と言ってもいくつか種類があるということを、シンガポールに来て私ははじめて知りました。

日本だって、海岸に行けば、海岸の、山に行けば山の、湿地に行けば湿地の、特徴的な森や植物があるのだから、考えてみればアタリマエなんだけど、想像したこともなかったというのが実態。

そのいくつかを紹介ます。

まずはいわゆるジャングル。実は「ジャングル=熱帯雨林」ではないんだそうです。

ジャングルと言うのは「熱帯雨林を人間が切り開いたりして光がよくあたるようになった場所に存在する、藪が茂っている場所」のことを言うのだそうです。背の高い草が生い茂って、とても手でかきわけて歩くことができないような場所。こちらのカテゴリーでは「二次林」となってるのがこれに当たるのかなぁ。

それから川の河口や海岸線で見られるマングローブ林」と陸地部で見られる熱帯雨林」。

そのほかにも「泥炭湿地林」とか「熱帯ヒース林」とか「熱帯山地林」とかがあります。でもシンガポールでは一般的ではないので、こちらのブログのカテゴリーには入っていません。

「泥炭湿地林」は、熱帯の海沿いや内陸の高い地下水面に対応して出現する森林。シンガポールの中央部にある、ニースンの森はスワンプフォレストと呼んでいるのだけど、これに当たるのかな?調べときます。

「熱帯ヒース林」は、熱帯で土壌養分が極端に少ない場所にできる森林で、樹高も種の多様性も著しく低い森林のため、熱帯雨林と区別されるのだそう。

「熱帯山地林」は、標高600m以上にある、温帯林と共通する植物群からなる森林なのだそうです。

ざっとご紹介でした。

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2005年12月29日 (木)

シンガポールの気候

今日から何回か飛び飛びで、熱帯雨林の説明の回を入れますね。昔、書いたものの、コピペなので申し訳ないのですが、知っておくと熱帯植物を理解しやすくなるので、読んでおいてもらえたらなあって思って…。(日本行きのために書き溜めるために小休止のページを作ってます。すまん!)

シンガポールの植物についてのブログを読んでいただくにあたって、知っておいてもらいたいなあということがあります。この国の気候についてです気候と関係のない植物の形はありえないし、植物と関係のない、人間の暮らしもありえません。

植物の形は必然性があって、進化の過程を経て、植物が獲得してきたものだからです。

人はどんな時でもそれらからおこぼれをもらいつつ、利用して、暮らしを便利にしてきたからです。

では、日本の気候と具体的にどこが違うか?

よく「暑くてもカラッとしていてそんなに暑く感じないんでしょ?」と言われるんですが、さにあらず。初めてシンガポールの空港から出てこの空気を吸ったときの感じはまさに「どーーん」という空気の重さでした。気温が高くて、湿気がいっぱいあって「どーーん」という感じ。だから、カラッとはしていません。

シンガポールは北緯1度。ほぼ赤道直下と言っていいかな。熱帯雨林気候です。

皆さん、覚えていますか? 中学あたりの地理で勉強しましたね。広辞苑によると、「熱帯雨林;tropical rain forest;熱帯の高温多雨の地域にある森林。主に常緑高木と藤木(とうほん)、着生植物でうっそうたる密林をなす。南米のアマゾン川流域、アフリカのコンゴ盆地、アジアのスマトラ、ジャワ、ボルネオなどに著しい」とあります。

熱帯雨林というと、私のイメージは「ターザン」の世界。「あーああーー!」とターザンが叫びながら飛び回る鬱蒼としたジャングル。その中に一日に一回スコールがやってくる。

そのイメージと、ガイドブックで見る、買い物大国、観光大国(国は淡路島くらいしかないんですけど)のシンガポールは全然結びつきません。来てみたら、都会!!それも緑がいっぱいできれいに既に作られてしまってる都会!熱帯雨林の面影なんてこの国には全然ありません。町の中を視覚的に見る限り、日本とどこが違うの?って感じです。勿論、建物も、町の作られ方も、木の種類も全然違うのですけど、みーんな人の手で作られているもので、私が想像していた熱帯雨林など、もうこの国には存在しなかったのです。

熱帯雨林の面影はないけど、熱帯雨林気候の片鱗は確かに存在しました。

まず。暑い。

朝も昼も夜もずーっと暑い。そしてずっと「どーん」と湿気がある。朝の気温でさえも27度くらい。昼は毎日32度とか。ただ、35度以上というような極端に暑い日もありません。

スコールがある。

局地的に雷を伴った集中豪雨があります。1日1回と言うけど、そういうわけでもありません。森林がなくなって町ばかりになった結果、日本の夏に夕立がなくなったのと同じように、雨が少なくなっているそうです。でも周りが海に囲まれているのでまだ、そんなに顕著でもないらしい。1週間雨がまったく降らないというのもそんなにない…かな?逆に日本のように一日雨がしとしと降るなんてこともありません。降るときはまとめてドーっと降ります。

あとはですねー。台風がない。

台風はシンガポールあたりで発生して、緯度の高い方へ移動しながら力を増していくものなので、このあたりには台風としては存在しないのです。ということは極端な強風が吹かない。春一番みたいな突風も吹かない。

四季もない。秋とか春とか冬とか。存在しません。代りにあるのは雨季と乾季。

4月から9月ごろまでは乾季。でもスコールは降るから、乾季と聞いて私たちが想像するような切羽詰った状況というのはありません。何となく晴れが多くてずーっと暑い季節と、何となく雨が多くて気持ち涼しいような感じがする季節があるだけのようです。 

赤道に近いから、夜と昼の時間も1年中ほとんど変わりません。朝7時に明るくなって、夜7時に暗くなる。多少の時間のずれはありますが、ほとんど無いので、シンガポールには「夜7時になったら車のライトを点灯すること」という交通規則があるくらいです。

熱帯雨林気候とはちょっとずれますが、もう1つ。地震がない。これもシンガポールの特徴の1つです。

ざっと気候は想像できましたか?今から2昔前くらいの日本の8月の状態が1年中続くとでも思ってくださいませ。

こんな環境の中で、このブログの植物達は生きています。こんな空気を想像しながら植物を思い浮かべていただくとよりイメージがしやすいんじゃないかな?って思います。

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