カテゴリー「裸子植物」の記事

2007年6月28日 (木)

グネツム目くらべ

まずは下の3種類の植物を見比べてみよう!

1つめ。キソウテンガイ(奇想天外Welwitschia mirabilis)の名前で珍種扱いされている植物。変な植物の代表みたいな扱いをされていて、何かと話題の子です。写真は浜松のフラワーパークの温室で。褪せた色のは、一緒にくっついていた看板の写真です。綺麗な写真は検索をかければいっぱい出てきますが、とりあえず見たい方はこちらへ。

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2_134上の写真を見ると葉っぱが2枚しかない でしょ。対して左のはいっぱいあるみたいに見えますが、実は上の写真にあるような2枚の葉っぱが縦にいくつにも裂けて左の写真のようになるんだって。

変でしょお!

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2つめ。ちょっと前に小石川植物園でようやく対面したマオウ(麻黄)ちゃん。

下の葉っぱのアップを見て分かるように、まるでスギナかトクサのような葉っぱらしくない葉っぱ。

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3つめ。熱帯でしか見られないので、シンガポールで初めてTOMはお知り合いになって惚れてしまったグネツムちゃん。

下の写真の木がそう。

葉っぱは下の写真のような感じで、普通の被子植物の木の葉っぱと変わりないように見えます。

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ちょっと見ただけでも全然違うこの3種類の植物達、じつは みんなグネツム目のお仲間。兄弟姉妹と言ってもいい間柄なんです。 (科より1つ上のまとまりのことを目(もく)といいます。)

兄弟姉妹って言ったら普通はどこか似たところがあるものなのにねぇーー。

全然似てません。

素人にはよくわかりませんが、お花とか実とかの構造で、こういう科とか目とかいう植物のまとまりを決めてきたんだって。

で、Aという植物とBという植物がよく似てるから、これは親戚に違いない…とか考えて、色んな分類方法が生まれてきました。植物事典なんかもこういった分類方法を使って植物の順番が決められていることが多いです。TOMが学生(20年位前)の頃に使っていた植物関係の事典なんかはエングラーって人の分類法で植物が順番にならんでいたし、今よくお世話になっている朝日の「植物の世界」なんかは被子植物に関してはクロンキスト、裸子植物に関してはエングラーってな感じで分類方法を選んで、事典に載せる植物の順番を決めています。

最近になってようやく虫眼鏡よりも細かい世界の事が色々調べられるようになったので、外からの見かけじゃなくて、植物の中身から分類してみるということが試みられるようになりました。どういうことかというと、遺伝子を解析して、AとBがどんな関係なのか調べるって方法。

生物ってのは40億年くらい前に発生した1つの生物から多様に進化して、人間や植物やキノコや虫になってきたんだけど、進化の過程で少しずつ遺伝子が変化してきたので、遺伝子の変化の仕方でAとBっていう生物の関係がわかるんだって。見た目がとっても似ていても、遺伝子を見てみると、すっごく遠い、親戚でもなんでもないってことがわかることもあるし、逆に姿は全然違っていても実はごくごく近い親戚だったって事が分かる場合もあるのだそう。今年のはじめには、有名なラフレシアが遺伝子解析の結果、トウダイグサ科だったというニュースが流れて話題になりましたね。

今から14年位前、1993年までにとりあえずの大まかな科の系統がわかるようになって、今もこの遺伝子解析を用いた植物の進化の系統樹づくりが行われて、植物進化についての新しい事実がどんどん明らかにされています。

こんなに違うグネツム目の兄弟達だけど、遺伝子解析の結果でも、変わらず兄弟だったよう。

グネツム科のことを書いたときにも書きましたが、この子たちはこんな顔をしていながら、裸子植物の仲間。

裸子植物といえば、松ボックリのつく松とか杉の仲間、蘇鉄、イチョウなんかが、まぁ、普通のよく見る裸子植物。グネツム兄弟達は上の写真を見ても分かるように姿かたちは全然…ぽくない!

裸子植物の仲間の特徴は資料によればこんな感じ。(言葉はわかりやすいように乱暴に選んでます。細かいことは言わないで)

生殖器官は単性。被子植物の両性花のようにオシベとメシベが同居したようなものはない。

胚珠が剥き出し。被子植物のように子房に守られていない。

③花粉の送粉方法はほとんど風媒。胚珠が出す受粉滴に取り付いて受粉。花粉管はあんまり発達しない。精子か精核で受精。

④受精は卵細胞のみで起こる(重複受精をしない

⑤子葉は2個または多数で、葉は針形、偏平または羽状で葉脈が単純。

⑥通道要素は仮道管と し細胞

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グネツム兄弟(目)の場合、マオウちゃんはまるで重複受精みたいなことをする(④に反する)し、

グネツムちゃんは受粉滴を甘くして虫を誘って風媒じゃなく虫媒(③に反する)しちゃうし、

左の写真はグネツムの甘い雌花の受粉滴

下の写真は雄花と不稔の胚珠から出ている受粉滴が右上に見える

この汁が欲しくてガが雌雄の区別なくやってきて受粉を手伝っている

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葉っぱの葉脈もちょっと複雑っぽいし(⑤に反する)、15_8

道管なんかもあったりしちゃって(⑥に反する)、他の裸子植物兄弟達よりもどっちかって言うと被子植物たちに近かったりなんかして…。

そんなこんなで、外からの見た目であれこれ進化の様子を想像していたときには、グネツム兄弟たちが被子植物の直接の祖先と考えられていたりもしたんだって。

でも今の遺伝子解析の結果では、グネツム兄弟たちは裸子植物として独自に進化しただけで、被子植物の祖先ではないことがわかったそう。系統が違うものが同時期に同じような進化をする…なんか植物が意思を持って話し合って「これからはこういう方向で…」なんて決めてるみたい。進化って面白いですね。

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最後にグネツム兄弟のお花を見比べてみて!

左はマオウの雄花。上にグネツムちゃんの雄花、雌花。

キソウテンガイのお花はshuさんのページのが分かりやすくて綺麗でした。

似てる???これを兄弟と判断した植物学者たちはやっぱりスゴイ。TOMには全然わからないわ…(溜息)

資料:「朝日新聞社 植物の世界」 P11-162~175

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